プロボクシングのホープ、重岡兄弟によるミニマム級ダブル世界戦が16日、東京・代々木第2体育館で開催される。今回の世界戦では、08年からWBCが採用するビデオ判定(インスタントリプレー)もクローズアップされている。WBCとともに、これまで積極的ではなかったIBFもABEMAの協力を得て「ビデオ・テスティング・システム(VTS)」と呼ばれるビデオ判定を導入。興行主となる3150FIGHTファウンダー亀田興毅氏(36)、試合をライブ配信するABEMAの協力を得て実現することになった。

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プロボクシング界でのビデオ判定は、WBCが先駆けとして積極的に導入を推進してきた。15年前の08年からWBCは世界戦でインスタントリプレーを採用。著しく試合決着に影響を及ぼす戦い方や違反行為、レフェリーの誤審などのチェックをビデオ映像で検証している。WBCの主なルールとして立会人(スーパーバイザー)ら3人のパネリスト(委員)が映像を確認し、判断する。

最近では22年3月のWBC世界ライトフライ級タイトルマッチとなった矢吹正道-寺地拳四朗戦や同年11月のWBAスーパー、WBC世界同級王座統一戦となった寺地拳四朗-京口紘人戦でもインスタントリプレーが採用されていた。しかし、レフェリーのジャッジや選手のファイト内容で疑義は出なかった。

今回の重岡兄弟による世界戦では試合を配信するABEMAの全面協力により、「ビデオ・テスティング・システム(VTS)」というビデオ判定が導入される。別角度でカメラ5台を設置。レフェリーからのジャッジ要請があった場合、3人のパネリストが映像をチェックし、パネリスト3者が同判断となった時にジャッジが変更される。日本ボクシングコミッションの安河内剛・本部事務局長は「基本的にはWBCのビデオ判定ルールに準じて行います」と説明した。

JBCでは今年3月の2つの興行でABEMAと協力し、VTSのテストに取り組んでおり、安河内本部事務局長は「かなり精度の高い判定ができる。上々の仕上がりになっている。瞬時に映像を取り出せており、判断の時間はかからないと思う」と太鼓判を押す。また観客や視聴者にも可能な限り分かるように、大型画面でチェックする映像が映し出される見通しだ。

1月6日のIBF世界同級タイトルマッチ(エディオンアリーナ大阪)では正規王者ダニエル・バラダレス(メキシコ)と挑戦者重岡銀次朗(ワタナベ)が3回途中、偶然のバッティングとなった。重岡のあごに王者の頭が直撃したが、王者サイドが大ダメージを主張し、試合続行不可能となり無効試合と裁定された。 判定の難しさが浮き彫りとなった経緯もあり、亀田氏は今回のビデオ判定導入を水面下で強く推し進めていたという。亀田氏は「すべて完璧にできないが、再発防止を3150FIGHTでできるのはうれしい。今後の3150FIGHTの世界戦ではVTSを義務づけてやっていきたい」との方針を示した。WBCが08年に採用してから約15年。野球やサッカーのようにプロボクシング界でもビデオ判定が注目されるタイミングがあるかもしれない。