大相撲行司の最高位、36代木村庄之助の山崎敏広さん(71)が、相撲字を書いて新型コロナウイルスの終息を願った。日刊スポーツの依頼に応じ、「おうちで過ごそう」「手洗い励行」「コロナに負けない」など9枚をしたためた。これらは、当社ウェブサイトからのダウンロードも可能。自宅や会社に掲示したり、スマートフォンの待ち受け画面にしたりしつつ、外出自粛の日々を乗り切りたい。

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36代庄之助の山崎さんは突然のお願いにもかかわらず、二つ返事で引き受けてくれた。「今は大変な世の中。私の字が少しでも役に立つならうれしいことですよ」。日刊スポーツが依頼した「おうちで過ごそう」「コロナに負けない」「辛抱」「手洗い励行」「世界平和」に加え、書きたい文字をお願いすると「忍之一字」としたためた。

「私の行司生活で、くじけそうな時が何度もありました。周りの人に励まされ、我慢して耐えました。新型コロナウイルスに耐えなくてはいけない今、これしかないと思いました」

1964年(昭39)3月に初土俵を踏み、2008年夏場所で立行司・式守伊之助に昇進し、11年九州場所から2013年5月の定年まで36代木村庄之助を務めた。達筆で知られ、2000年から約7年半、戦後6人目となる番付の書き手を担った。定年から約7年たつが、どっしりとした相撲字は今も健在だ。

「都知事の言うとおり、今は3日に1度しかスーパーに行きません。人が少ない時間帯に行くようにしています。コロナはどこに潜んでいるか分からないから憎たらしいし、悔しい。早く終息して欲しいですね」

心に響く太い文字に、願いを込めた。【佐々木一郎】

◆相撲字 大相撲の行司が番付などに書く独特の書体の毛筆文字。「根岸流」とも言われる。字の空白をできるだけ少なくして書く。これは場内が大入りになることを願って験を担いでいると言われている。

◆木村庄之助 大相撲行司の最高位。昇進するには、勤続年数、力量、品格などが判断される。現在は結びの一番のみを裁く。軍配の房の色は紫。式守伊之助と木村庄之助は立行司と呼ばれ、帯に短刀を差す。庄之助は37代2015年3月場所で定年後、現在まで空位。

◆36代木村庄之助(きむら・しょうのすけ)本名・山崎敏広。1948年(昭23)5月16日、鹿児島県生まれ。鹿児島・枕崎中卒業後、相撲界に入った。64年初土俵。38代式守伊之助、36代木村庄之助を襲名した。2013年4月、JR枕崎駅が新駅舎になった際、駅名の看板を揮毫(きごう)。同年12月には文科相からスポーツ功労者顕彰を贈られた。