新大関の朝乃山(26=高砂)が、取り直しの一番を制して無敗を守った。小結隠岐の海に攻め込まれながらも上手投げを決めたが、物言い。同体取り直しとなった一番も、粘る相手を上手投げで転がした。昭和以降5位タイとなる、新大関の初日から9連勝。同じく無敗を守った横綱白鵬とともに、残り6日間を引っ張る。関脇正代と、序二段から史上初の再入幕を果たした照ノ富士が勝ち越しを決めた。

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協議の結果を待つ朝乃山は、負けを覚悟していた。つっかけられて2度目となった立ち合い。左上手を取ったが、隠岐の海の勢いを止められずに土俵際へ後退。体を開きながら、上手投げを打つと同時に落ちた。軍配は朝乃山も、物言い。「攻められた中で投げを打ったから負けたと思った」と手応えはなかったが、同体で取り直しになった。

取り直しの一番も立ち合いで左上手を取ったが、隠岐の海に粘られた。得意の右差しは途中で抜けた。再び差そうと巻き返した瞬間に出られたが、タイミングよく上手投げ。「取り直しになったから切り替えて攻めた。巻き替えたところで反射的に投げられた。この勝ち方も大事。明日から引き締めたい」。苦労しながらも無敗を守った。

8日目の土俵入りから、新しい化粧まわしを締めている。地元の朝乃山富山後援会の青木仁理事長が社長を務める、青木工業から贈られた「金太郎の抱き鯉」がデザインされた一本。青木理事長は「いわゆる出世柄です。出生とか武勇などの意味がある。高い地位を守るという意味も込めてあります」と説明。また飛躍の意味があるという黒色の鯉を使用した。場所前に贈呈した際、特別な声掛けはしなかったという。「大関本人が一番分かっていますから」。縁起の良い締め込みを締めた朝乃山は、応えるように勝ち続けている。

昭和以降5位タイとなる、新大関の9連勝。本人は「勝ち星は気にしない」と淡々と振り返った。全勝は白鵬と2人だけで、史上9人目の新大関優勝の可能性を残す。「1日一番、自分の相撲を取りきるだけです」と、連日口にしている言葉で締めて会場を後にした。【佐々木隆史】