1敗で優勝争いのトップを走っていた平幕の大栄翔(27=追手風)から、十中八九、手中に収めていた白星がすり抜けた。平幕の阿武咲(24=阿武松)を押し込み俵に詰めながら、距離が空いたのが災いしたのか、体を開かれ目標を失ってしまった。勢いそのままに突き落とされ土俵下まで駆け降りてしまった。

痛恨の2敗目。結びの一番で取り直しの末、命拾いした大関正代(29=時津風)に並ばれてしまった。ただ、この一番にも協会トップの八角理事長(元横綱北勝海)の評価は「逆に(大栄翔は)強くなったな、という印象」だった。「大栄翔の立ち合いは良かった。突き放して予想以上に阿武咲が土俵際まで行ってしまった」と、迷いなく踏み込んだ大栄翔のここまでを評価。ただ「慌てて上から、手から行って(押して詰めが)おろそかになった。足からでなく手で行ってしまった」と最後の詰めを欠いた場面を分析した。

その上で「悪い相撲じゃない。逆に強くなったな、という印象」と初めて経験する終盤での優勝争いでも、自分の立ち合いと攻めを貫いた姿勢を評価。「勝負どころで押し相撲は、こんなことはある」とし、「(敗戦のショックを)引きずる必要はない。大関や横綱なら違うけど、開き直って優勝うんぬんにとらわれず、自分の相撲を取りきるんだ、というぐらいの気持ちで」と残り4日も大栄翔らしい相撲を押し通すことに期待した。