西前頭2枚目の宇良(30=木瀬)が幕内では20年ぶりの大技、伝え反り(つたえぞり)で3勝目をあげた。ベテラン宝富士の脇をすり抜け、後ろに反り倒した。02年秋場所3日目に当時大関の朝青龍が小結貴ノ浪に決めて以来、2度目の珍手で館内を盛り上げた。かど番の御嶽海が2連敗。37歳の玉鷲は大関正代を圧倒して無傷の4連勝を飾った。

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“黙観戦”が基本の館内だが、声を抑えるのは不可能だった。業師の宇良が豪快に決めた。宝富士に得意の左差しをさせず、膠着(こうちゃく)状態から体を沈めて脇をすり抜けると、後ろに反りながら倒した。

幕内では20年ぶり2回目の珍手だが「過去に何回か何年ぶりがあったんで、特にうれしいとかはないですね」とクールな反応。昨年秋場所でも幕内で16年ぶりの送りつり出し、十両復帰の20年九州場所では十両以上で27年ぶりの居反りを決めている。ただ、朝青龍以来と聞くと「それはうれしいですね。小さいころから見て元気をもらっていたんで」と表情を崩した。

業師健在だが「小兵」ではなくなった。場所前の測定で自己最高の151キロ。「20歳の時は65キロだった」と言い、約10年かけて86キロ増量し大型力士と戦える体を作ってきた。力士生命も危ぶまれた両膝の大けがあり、押されない重さを求めた。「急に太ったわけじゃないんで。(今までと)変わらない」というが幕内上位に定着の結果が物語る。

まさに「銭がとれる力士」の真骨頂。場所前に「(三役の力は)まだない。もちろん目指してますけど」と言った。その目標も着実に近づいている。【実藤健一】

◆伝え反り 相手の脇の下をくぐり抜けながら自分の体を後ろに反らせて、その圧力で倒す。00年12月に追加された技の1つ。幕内では02年秋場所3日目に大関朝青龍が小結貴ノ浪を相手に決めており、今回の宇良が20年ぶり2回目。十両では里山が2度決めている。