[ 2014年7月3日8時52分

 紙面から ]スイスのシャキリ(左)は試合後にヒッツフェルト監督にねぎらいの言葉を掛けられる<W杯:アルゼンチン1-0スイス>◇決勝トーナメント1回戦◇1日◇サンパウロ

 優勝候補のアルゼンチンを最後の最後まで苦しめた。メッシを封じ、延長戦まで持ち込んだ。今大会限りで勇退するオットマー・ヒッツフェルト監督(65)は、約30年にわたる監督生活フィナーレにふさわしい名勝負を残した。試合後は「世界中の同情を買うことはできただろう。選手を誇りに思うし、顔を上げて大会を去ることができる」と、どこか満足げにも見えた。

 試合前日の1日に81歳になる兄が亡くなったが、チームにとどまり、指揮を続けることを選んだ。監督の気持ちに若い選手たちも応え、最後まで気持ちを切らさず戦った。1点をリードされた延長後半ロスタイムには驚異的な反撃も見せた。ジェマイリのヘディングはポストにはね返され、シャキリのFKも壁に当たった。それでも、会場からは奮闘に惜しみない拍手と歓声が送られた。

 先発11人中、6人が1990年代生まれの若いチーム。ドルトムントやBミュンヘンを欧州CL王者に導き、スイスで6年間指揮を執った。「素晴らしいチームで働くことができて幸せだった」。60年ぶりのベスト8進出はならなかったが、名将はスイスに明るい未来を残した。