今年も早いものでハリウッドの賞レースのシーズンがやって来ました。9日にはゴールデン・グローブ賞のノミネート発表を控えていますが、来年1月13日に発表されるアカデミー賞のノミネートを前に早くも韓国映画「パラサイト 半地下の家族」が非英語作品としては史上初となるアカデミー賞作品賞を受賞する可能性が取りざたされています。昨年のアカデミー賞では1970年代のメキシコを舞台にしたアルフォンソ・キュアロン監督の「ROMAローマ」が外国語映画賞と共に非英語作品としては異例の作品賞へのノミネートを果たして話題になりましたが、今年は「パラサイト 半地下の家族」の作品賞へのノミネートが有力視されています。「ROMAローマ」は、外国語映画賞を獲得したものの作品賞はあと一歩及ばず受賞を逃しましたが、来年はひょっとすると「パラサイト 半地下の家族」が史上初の快挙を成し遂げるかもしれないと早くも米メディアで話題になっています。

「パラサイト 半地下の家族」は、今年から名称が外国語映画賞から変わった国際長編映画賞にノミネートされるのは確実視されていますが、他に作品賞、監督賞、脚本賞のノミネートも有力視されています。同作は今年5月にはカンヌ国際映画祭で韓国映画としては初となる最高賞「パルム・ドール」を受賞し、ポン・ジュノ監督は監督賞にも輝きました。また、オスカー前哨戦として注目されるトロント国際映画祭でも観客賞の3位に入っており、高い評価を受けています。10月11日にアメリカで限定公開され、現時点で1440万ドルを超える興行収入を記録するヒットとなっています。貧富格差を描きながらも超一流のエンターテインメント作品になっている本作は、予想のつかない展開にハマる人が続出で、バラエティ誌は「アカデミー賞の歴史を塗り替える」と評し、ハリウッド・レポーター誌も「作品賞の壁を打ち破るかも?」と題した特集記事を掲載。ニューヨーク・タイムズ紙は「今年の映画」に同作を選び、「アート映画かポップコーン映画かという区別を消しさる作品」と絶賛しています。

これから次々に発表される各映画賞での躍進が期待されますが、非英語作品でこれまでアカデミー賞作品賞にノミネートされたのは、「ROMAローマ」以外ではクリント・イーストウッド監督の「硫黄島からの手紙」(06年)とアン・リー監督の「グリーン・デスティニー」(00年)のみ。いずれの作品も受賞を逃しており、「パラサイト 半地下の家族」が受賞すれば史上初の快挙となります。今年の作品賞は、他にトロント国際映画祭で観客賞を受賞した「ジョジョ・ラビット」や社会現象にもなったバットマンの宿敵ジョーカーを主人公にした「ジョーカー」、マーティン・スコセッシ監督とロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノがタッグを組んだ「アイリッシュマン」などのノミネートが有力視されていますが、どんな作品が出そろうのか乞うご期待です。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)