9月に入って、楽しみにしている舞台がある。9日から東京・日生劇場で始まる、京本大我主演のミュージカル「Once(ワンス)」だ。原作は2007年に公開された映画「Once ダブリンの街角で」。アイルランドの首都ダブリンを舞台に、街頭で自作の歌うストリートミュージシャンの青年と、チェコ移民の女性との出会いと別れを描いた作品で、ダブリンの美しい街並み、そして二人の心の揺れ動きを巧みに表現した主題歌「Falling Slowly」にすっかりトリコになった。4年後にミュージカル化され、12年にはブロードウェーに進出し、トニー賞で作品賞など8部門で受賞した。3年弱のロングランだっため、残念ながら、ミュージカル版を見ることはなかった。

今回の観劇前に、ブロードウェーでの初演当時のことを知りたいと思っていたら、格好の本が7月に出版された。「ミュージカルの『現在』ー変容するトニー賞」(河出書房新社)で、著者は新聞記者から専修大教授に転身した、国内のミュージカル研究第一人者の小山内伸さん。この本では2008年から24年までのトニー賞受賞作を取り上げ、時代によって変わってきたトニー賞受賞作の傾向を緻密に分析しつつ、その作品の魅力を分かりやすく紹介している。「Once」の評価・感想を少し抜粋すると、「美しく愛らしい秀作だ」「素朴ながら最後には舞台が輝いて見えた」とある。これだけを読んでも、観劇する日が待ち遠しくなる。

ちなみに「Once」とトニー賞を争い、楽曲賞を受賞したのが「ニュージーズ」。4年前の日本公演初演では京本が主演している。「ニュージーズ」から「Once」へ。京本のミュージカル俳優としての成長ぶりも楽しみである。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)