宝塚歌劇としては約8年ぶり5回目となる「ロミオとジュリエット」。星組トップ礼真琴、相手娘役・舞空瞳による星組公演が、兵庫・宝塚大劇場で上演されている。潤色・演出の小池修一郎氏、演出の稲葉太地氏によると、礼の“王子様色”を生かして衣装の装飾を極力省き、舞空の芯の強さをジュリエットに反映。「新生ロミジュリ」を誕生させた。フィナーレのデュエットもフラメンコ調。ダンサー・コンビの個性も際立つ作品に仕上がっている。

宝塚では10年に柚希礼音主演の星組で初演。13年にも星組で本拠地作として再演された。礼は初演時に2年目で宝塚版オリジナルの「愛」に抜てきされ、13年には本公演でも主要キャスト、新人公演では主演。「死」に加えて、「愛」を根底テーマに加えようと考えた小池氏は、まだ2年目だった礼の技量にひかれた。

小池氏 オリジナル版にあった「死」(の表現者)に、「愛」も加えれば宝塚のロマンチシズムを出せると、考えたんです。

小池氏は、柔らかくも強いダンス技量をすでに備えていた礼を「愛」に即決。初演から3年後、礼は新人公演でロミオを演じ、星組の主力へ名乗りを上げた。礼自身も「記念碑的作品」と振り返る転機作だ。

小池氏 (以来の再演に)礼は、はっきりロミオ像を持っていると思ったので、それをしっかり引き出せれば、と。舞空のジュリエットは、従来のジュリエットよりも主張がある。行動に対して自分の考えがある。そこを強調するのが、これまでとの大きな違い。

稲葉氏 ロミオの方が夢見がち、ジュリエットの方が女性として意思がある。

稲葉氏も、よりはっきりと色付けを考えた。

小池氏 前回(礼ロミオは)大絶賛され、その初々しさを失わず、けなげにひたむきに生きていく若者像が今回も、彼女自身の持ち味とマッチングした。舞空は、もちろんまだ初々しいけども、彼女は、宝塚の娘役の中では、少女っぽさではなくて、女性としての魅力を出せるタイプ。そこが今回のジュリエットと結びついて表現できている。

稲葉氏 礼真琴のロミオはナイーブな面がいい。彼女の持つ繊細さがあいまって見える。舞空は下級生の頃からとても芯の強い女の子で、うまく出ている。

衣装も、初演時から装飾を省き、シンプルに。

小池氏 初演時の柚希礼音さんは、それまでどちらかと言えばワイルドなタイプ。王子様色を出すのに、衣装の力は必要だった。でも今、礼真琴には逆に装飾過剰になるかも。そのままで繊細でナイーブで、センシティブ。王子様色を持っている子ですから。

礼、舞空の個性が役にはまった。同時に2人は劇団きってのダンサー・コンビ。フィナーレのデュエットも持ち味を引き出す。

小池氏 大人っぽい情熱的なダンスを踊らせるには-と、結果「エメ」をフラメンコ風に-となった。

礼・舞空コンビの新生星組、1年ぶり2作目の本拠地作。礼ロミオが躍動を重ねている。【村上久美子】

◆ミュージカル「ロミオとジュリエット」 兵庫・宝塚大劇場で3月29日まで上演中。東京宝塚劇場で4月16日~5月23日。

新人公演主演の思い出作でロミオにふんした星組トップ礼真琴(中央)と、仲間を演じた瀬央ゆりあ(右)極美慎(撮影・村上久美子)
新人公演主演の思い出作でロミオにふんした星組トップ礼真琴(中央)と、仲間を演じた瀬央ゆりあ(右)極美慎(撮影・村上久美子)
「ロミオとジュリエット」で敵役のティボルトにふんした2番手スター愛月ひかる(撮影・村上久美子)
「ロミオとジュリエット」で敵役のティボルトにふんした2番手スター愛月ひかる(撮影・村上久美子)
究極の悲恋作でロミオにふんした礼真琴(右)とジュリエット役の舞空瞳(撮影・村上久美子)
究極の悲恋作でロミオにふんした礼真琴(右)とジュリエット役の舞空瞳(撮影・村上久美子)