月組トップ月城かなとが、就任本拠2作目で、男役の神髄が詰まった名作ミュージカル「グレート・ギャツビー」に臨んだ。謎の資産家にふんし、麗しいスーツの着こなし。巧みな演技力は歌にも込めた。公演は兵庫・宝塚大劇場で6日遅れて7月22日に開幕したが、残念ながら同29日から今月18日までの中止が決定。演出の小池修一郎氏も「トップとして上昇気流」の月城ギャツビーに、新たな息吹の芽生えを期待しており、再開が待たれる。宝塚は8月22日まで、東京宝塚劇場は9月10日~10月9日。

相次ぐコロナ禍に見舞われ、6日遅れて開幕したその7日後、また公演が止まったが、再開への準備が重ねられている。7月22日の初日も、コロナ禍を乗り越えた分、月城ら月組生の集中力が凝縮されていた。

月城は終演後、大羽根を背負い「やっとお会いできて本当にうれしく思います」とあいさつ。開幕延期に際し、ファンからの激励の声を受け、感謝の思いを強くした。「お待たせしてしまった分、月組生みな、やる気に満ち満ちています!」と宣言。「何が起こるか分からない毎日ですが、1日1日、1公演1公演を上演できる幸せを胸に、大切にしたい」と誓っていた。

今作は、F・スコット・フィッツジェラルドによる20世紀アメリカ文学の最高峰が原作。宝塚では、91年雪組で杜けあきが主演し「華麗なるギャツビー」として世界で初めてミュージカル化。08年には月組の瀬奈じゅんで再演されている。

当代きっての芝居巧者トップによる「3代目ギャツビー」。多様なスーツ、ロングコートを羽織り、軍服姿も披露。抜群の演技力に加え、宝塚伝統の「美」を継承する月城の魅力が存分に発揮されていた。

トップ娘役の海乃美月は、ギャツビーを思いながらも資産家と結婚するデイジーを熱演。人気スター鳳月杏はデイジーの夫を、下級生時代から演技力が評価される風間柚乃は、ギャツビーの隣人でデイジーの親類、そして語り手というキーパーソンを演じている。

月城、海乃のトップコンビは、就任から本拠地2作目。5月の製作発表で、月城は「(海乃と)2人で同じ物を作り、目指す方向が合わせやすくなってきた。今回は、単なるラブストーリーではない。いろんなことに挑戦してきた2人だからこそできる舞台を。(今作を経験し)2人で作れる作品の幅が広がっていくのでは」とも語っていた。

海乃も、月城に「表現力が豊かで、イメージされる力も広い。とても尊敬しています」と心服。「(月城は)おひとりで考えるのではなく、共有してくださる。皆が同じ方向へ向かっていける」と感謝する。

製作発表から稽古開始、開幕遅れ、再びの中断と、幾度の試練を乗り越え、さらに絆は固まって、再出発へ向かう。【村上久美子】

◆おことわり 公演日程については変更の可能性があります。最新情報は、宝塚歌劇団の公式ホームページなどで確認ください。