7月スタートの夏ドラマが出そろった。6月組を含めバラバラなタイミングでスタートし、五輪期間中の放送休止や出演者のコロナ感染による休止対応など、イレギュラーな放送となっている。無難路線なのか、「俺様」と「王子様」が多発し、見応えも視聴率も低調の様相だ。「勝手にドラマ評」47弾。今回も単なるドラマおたくの立場から、勝手な好みであれこれ言い、★をつけてみた(主要枠新作)。

◇   ◇   ◇

◆「ナイト・ドクター」(フジテレビ、月曜9時)波瑠/田中圭/岸優太

★★★☆☆

「夜の病院」が舞台だが、夜間らしい視点があったのは2話のコンビニ受診くらい。仕事と育児の板挟みで苦労する母親、無保険の患者など、病院ものの定番エピソードが手堅いので、ベタが好きな人にはおすすめ。「寮で共同生活」というはやりの設定を乗せて群像劇を模索しているが、3年目が11年目にタメ語という唐突な演出に戸惑う。夜とはいえ、事情を盛りすぎて人物たちが暗めで話も重め。「頑張ります!」といううれし涙に若者の成長がはつらつとあった北村匠海(3話)みたいな物語の方で、月曜の夜は楽しみたい。ラジハ、朝顔など医療ドラマ依存が続く月9。次もラジハの続編。

連続ドラマ「彼女はキレイだった」(C)フジテレビ
連続ドラマ「彼女はキレイだった」(C)フジテレビ

◆「彼女はキレイだった」(フジテレビ、火曜9時)中島健人/小芝風花

★★☆☆☆

超イケメンエリートに変身した少年と、無職の残念女子に変身してしまった少女の再会。幼少時の面影がないから起こる人違い&すれ違いを原作の韓国ドラマはうまくラブコメにしているのだが、日本版は俺様キャラへの魔改造で塩対応の真意や体温が伝わりにくいのか、視聴率が4%台に。中島健人と小芝風花で年齢設定を若くし、少女漫画感強め。奥行きを欲張らず「モスト廃刊阻止」というお仕事ドラマ寄りでバットを短く持った方がすっきりするかも。今後のキュンは赤楚衛二と佐久間由衣にかかっており、そこは抜かりなさそう。

火曜ドラマ「プロミス・シンデレラ」(C)TBS
火曜ドラマ「プロミス・シンデレラ」(C)TBS

◆「プロミス・シンデレラ」(TBS、火曜10時)二階堂ふみ/眞栄田郷敦/岩田剛典

★★☆☆☆

離婚で路上生活となった27歳元主婦が、金持ち高校生の「オレ専用のおもちゃ」になって借金返済。五輪開会式をめぐって表面化したいじめ問題と似て、同級生いじめて笑う御曹司キャラを「ツンデレ男子」として楽しむコツが分からなかった。「パーティーの主役に恥をかかせたら20万円」みたいな悪趣味は原作の画風だから成立するもので、見知らぬ人へのいじめにあっさり乗るヒロインに二階堂ふみはもったいない。「逃げ恥」を生んだこの枠も、「恋つづ」のヒットあたりから俺様としもべ女子の設定ばかり。3話で視聴率6%台に。もう少し颯爽とした女性像が見たい。

水曜ドラマ「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」(C)NTV
水曜ドラマ「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」(C)NTV

◆「ハコヅメ~たたかう!交番女子~」(日本テレビ、水曜10時)戸田恵梨香/永野芽郁

★★★★★

元刑事課のエース(戸田恵梨香)と新人警察官(永野芽郁)の交番バディもの。型破りヒーローでも清濁併せのむおじさんでもなく、わりと年の近い先輩が新人を育てる一般社会のアプローチがドラマとして新鮮。タフな戸田恵梨香のハンドリングがかっこよく、永野芽郁の成長も応援しがいがある。家宅捜索手伝い、検視補助など、意外な交番業務から見る人間模様はドラマの宝庫で、笑いとホロリのバランスもすてき。三浦翔平、山田裕貴の刑事課コンビのチャラかっこよさ。被害者対応を誤った新人を山田が諭す3話は、若い先輩の知見と、この世代らしい優しさが染みわたる名場面だった。8月4日、11日は特別編を放送。

◆「推しの王子様」(フジテレビ、木曜10時)比嘉愛未/渡辺圭祐

★★★☆☆

ゲーム会社の女性社長が、フリーター男子を理想の王子様に育てる。言語が人を作る「マイ・フェア・レディ」の男女逆バージョンだが、「気に留める」べき資料を「木に留める」とか、いろいろ幼稚。深キョン降板の穴を比嘉愛未が心を込めて埋めているものの、キャリアウーマンが自然すぎて、「メルヘン」「乙女ゲーム」「王子様」などのシュガーパウダーがはまらないのは痛しかゆし。「終わってんだよ」と自分の境遇を安く口にするケント様。俺様キャラにしなかったのは好感。功名心からイライザと関わったヒギンズ教授のように、ヒロイン側にも何か欠点や打算があった方が、二人三脚の成長を楽しめた。

金曜ドラマ「#家族募集します」(C)TBS
金曜ドラマ「#家族募集します」(C)TBS

◆「#家族募集します」(TBS、金曜10時)重岡大毅/木村文乃/仲野太賀/岸井ゆきの

★★☆☆☆

SNS、家族4組のシェア生活という今っぽい題材をホームドラマの伝統枠がどう見せるか期待したが、「みんなで笑おう」「幸せの味がする」「大勢で食べるとおいしい」「記憶の中で生き続ける」「家族だから信じられる」など、お役所のスローガンみたいなせりふを全力で言う雰囲気モノの感。登場人物みんなデコラティブで主張が強い。ホームドラマがすくい上げるべき“普通の人”の思いや輝きとはちょっと違った。重岡大毅と仲野太賀は逆では。SNS世代の重岡が若い発想でハウスを回す方向性で、下町風の小ざっぱりとした感動を見たかった。なんでみんな家の中で帽子なの。

金曜ナイトドラマ「漂着者」(C)テレビ朝日
金曜ナイトドラマ「漂着者」(C)テレビ朝日

◆「漂着者」(テレビ朝日、金曜11時15分)斎藤工/白石麻衣

★★★☆☆

秋元康×斎藤工。記憶を失った謎の漂着者「ヘミングウェイ」の未来予知に熱狂する人々と、その周りで起こる不可解な連続事件。教祖みたいな風貌や、カルトっぽい世界観をベースに、海岸に全裸、超能力、遺伝子工学、少女失踪、首つり、SNS、謎のポーズ(埼玉ポーズっぽい)などの客寄せ要素を盛りに盛り、小出しにしていく考察ファン向けコンテンツ。五輪開会式の裏でスタートというテレ朝のスパルタ編成の方がリアルに怖いが、医療と俺様ラブコメに偏る今期の中では貴重な異色作ではある。生瀬勝久のせりふがひとひねりあってかっこいいのと、斎藤工が気になるのでもう少し見てみる。

日曜劇場「TOKYO MER~走る緊急救命室~」(C)TBS
日曜劇場「TOKYO MER~走る緊急救命室~」(C)TBS

◆「TOKYO MER~走る緊急救命室~」(TBS、日曜9時)鈴木亮平/賀来賢人/中条あやみ

★★★★☆

命にまっすぐなリーダーの人間味に鈴木亮平がはまり、多重事故やトンネル崩落というスケールの中で激アツな突破力。滑舌のいい声が緊迫したシーンに合い、負傷者への「医師の喜多見です、分かりますか」の安心感がすごい。消防、警察、役所との押し引きもきちんと描き、「んなアホな」な展開も娯楽作品としてちゃんと痛快。女性陣がすっきりと自立しているのも医療従事者へのリスペクト。激動の1日だったママさん看護師への「お迎え6時ね」とか、元妻の外科医へのイヤホン越しの「千晶ならやれる」とか、最高のせりふを鈴木亮平が最高に言う。日曜劇場のクセが強い管制室の「ゼロです!」のコントはずっと続けるんだろうか。

日本テレビ日曜ドラマ「ボクの殺意が恋をした」
日本テレビ日曜ドラマ「ボクの殺意が恋をした」

◆「ボクの殺意が恋をした」(日本テレビ、日曜10時半)中川大志/新木優子

★★★☆☆

暗殺のターゲットに恋をしてしまった新米殺し屋コメディー。ついヒロインを守る流れになってしまう主人公のポンコツ展開に一定の人間味がある。毒を入れた皿を凡人にシャッフルされる、絶好のチャンスに渋滞にはまる…。間の悪い男のアップダウンを中川大志が顔面フルコースで演じ、意外とうまくて笑える。殺しのライバル、デスプリンス鈴木伸之は今期のサブキャラ賞。キザな魅力とアートな仕事ぶりがエモおもしろく、あのヒット作をパロッた「さよならDEATH」の仕上がりに噴いた。さくっと楽しいけれど、ストーリー運びが単調で主人公カップルの先も読めるので、大至急次の展開を期待したい。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)