元歌手の高田みづえ(55)が8日、NHKの音楽番組「第47回思い出のメロディー」で、30年ぶりに歌番組で歌唱した。1985年(昭60)に芸能界を引退し、大相撲の二所ノ関親方(元大関若嶋津)の妻となったが、一夜限りの復活。デビュー曲「硝子坂」と大ヒット曲「私はピアノ」を生披露し、視聴者を喜ばせた。

 高田は緊張していた。司会の松坂慶子に「31年ぶりにNHKホールに帰ってきていただきました」と紹介されると、少し硬いほほ笑みで会釈し、胸に手を当てながら、デビュー曲「硝子坂」を歌い始めた。

 「やっぱり、うまい」。変わらぬ透き通った声で、観客や関係者がうなる中、歌いきると、司会の北島三郎から「昨日まで一緒にやってたみたい。変わらないね」と話しかけられ、素の表情で返した。

 「緊張でどうにかなりそうです。(親方は)とても喜んでくれて、(力士たちは)歌ってきてください! と送り出してくれました」

 続く「私はピアノ」では、久々のスポットライトをかみしめるように、体でリズムを取った。歌番組で歌うのは、結婚で引退した85年6月5日のフジテレビ系「夜のヒットスタジオ」以来30年ぶり。ステージで歌う歌番組は、同じNHKホールが会場の84年紅白歌合戦以来31年ぶりで、終演後には安堵(あんど)の笑みを浮かべた。

 「緊張で大変だったけど、若い衆のことを話せて良かったです。親方にはすぐに電話したら、『良かったよ』って言ってくれました。少しろれつが回ってなかったけど、飲まないと心配で見られなかったのかも」

 前日のリハーサルからブルブルと震えたが、仲間たちの存在が心強かった。

 「(石川)ひとみちゃんもトシちゃん(田原俊彦)も(森)昌子ちゃんも一緒にやっていたし、渥美二郎さんは同期だったの。『えーっ、どうしたの?』って声をかけられて『場違いで申し訳ございません』って会話しました」

 今月3日にもTBS系バラエティー番組「私の何がイケないの?」に長女でタレントのアイリ(26)と出演した。ただ、芸能界に本格復帰する予定はない。「昔から歌手になりたくてなったので、幸せなすてきな1日でした」。一時でも、「歌手高田みづえ」に戻してくれたスタッフらに感謝していた。【瀬津真也】

 ◆高田(たかだ)みづえ 1960年(昭35)6月23日、鹿児島県生まれ。76年にオーディション番組でグランプリを取り、77年3月25日に「硝子坂」でデビュー。同年の日本レコード大賞など新人賞を多数受賞。NHK紅白歌合戦には同年も含めて7回出場。代表曲は「私はピアノ」「そんなヒロシに騙されて」など。