第89回米アカデミー賞授賞式がハリウッドのドルビー・シアターで行われた。式全体では、排他的政策を取るドナルド・トランプ米大統領への批判や皮肉が相次ぎ、政治色の強い授賞式となった。

 今年の授賞式は、反トランプ色が強い式となった。司会のコメディアン、ジミー・キンメルは、冒頭からトランプ米大統領の政策を批判した。「トランプ大統領にありがとうと言いたい。昨年の授賞式は(受賞候補者が白人に偏り)人種差別的だったが、今年は(反トランプの動きもあり)そうではない」と、白人至上主義を掲げるトランプ政権を皮肉った。さらに「我々はアウトサイダーを歓迎している。ハリウッドは国籍で差別しない」と、イスラム圏7カ国からの入国禁止政策にも言及した。

 この政策についての批判は多く、「セールスマン」で外国語映画賞を受賞したイラン人のアスガル・ファルハディ監督(44)は、抗議の意味を込めて授賞式を欠席。「LION/ライオン~25年目のただいま~」に出演したインド人子役のサニー・パワールは、ビザ取得に苦労したとして、新聞に「来年は(ビザ取得が)無理になっているかも」と広告を掲出した。

 さらにキンメルは、ゴールデン・グローブ賞でトランプ氏批判の演説をして「過大評価された女優」とツイッターで攻撃を受けた女優メリル・ストリープ(67)についても触れた。「今晩(批判の)スピーチをしたら、大統領から朝5時のトイレの時間にツイートがあるでしょう」と述べたほか、壇上からツイッターでトランプ氏に「(ツイートしていないが)起きてる?」とメッセージを送り笑いを誘った。女優たちには「すてきなドレスだね。イバンカ(トランプ大統領の娘イバンカさんのファッションブランド)?」と聞くなど、皮肉たっぷりだった。