大竹まこと(68)が、文化放送「大竹まことゴールデンラジオ!」(平日午後1時)放送10周年を記念してニッカンスポーツ・コムのインタビューに応じた。3回に渡ってお届けする連載では、医師で作家の鎌田實氏(69)との対談も紹介。第1回は、番組の名物コーナー「大竹発見伝~ザ・ゴールデンヒストリー」と、6月23日に出版した「人の数だけ物語がある。ザ・ゴールデンヒストリー朗読CDブック」(扶桑社)を通じ、市井の人々の人生に潜むドラマを伝え続ける理由と今の日本に思うことを語った。

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 番組が中盤に差し掛かる午後2時。「大竹発見伝-」が始まった瞬間、大竹は椅子に深々と座り、窓の外に広がる東京・浜松町の街並みを見詰め、自らの朗読に耳を傾ける。

 -市井の人々の生き方を知りたいという思いは何に突き動かされているのか

 大竹 あらためて聞かれれば、正義も真実も信頼も、俺には何も分からない。だから、知りたいのかも知れない。伝えたいと思っている。それくらいだね。

 -ラジオでは市井の目線で語っている

 大竹 笑いのオブラートに包んで、笑わせながらね。笑いは結構な武器だと思うんだよ。ただ、俺は本当の街のチンピラだから。コメンテーターなんて呼ばれるのは勘弁してほしい。高卒で雀荘のオヤジとマージャン打ったり、パチンコやったりしかしていないから、本当に難しいことなんて分かんないんだよ。世の中の動きについては、知識として理解しようとするけれど、官僚の人たちに脳みその中身にはかなわない。市井の人たち、俺も含めて、政治がよく分からない庶民が疑問に思うことをしゃべってるんじゃないかね?

 -今の時代はメディアも「これを言うとマズい」という空気がまん延している

 大竹 俺は俺なりに、ここがギリギリだなと思ってしゃべってるわけ。ただ、大事なこと、言わなくちゃいけないことに関して、俺は昔のルールで生きて、昔のテレビの、コメディアンのルールでしゃべっているから、今のコメディアンのルールよりかは必然的にノリを超えるわけだよ。昔はそれで良かったんだもん。許されたんだもん。テレビは裸だらけだったし、何やっても良かったんだもん。

 -テレビは、製作現場のコンプライアンスの縛りが厳しくなっている

 大竹 何だろうな? と思ってね。自分たちで、つまんなくしてるのが、どうして分からないんだろうね? 俺は昔「SMさん、いらっしゃい」って番組、やっていたんだから(笑い)。

 -お行儀良くしようという世間の空気が、そうさせているのか

 大竹 というか、それは全部、マイノリティーじゃない? 例えばSMにしても、縛られるのが好きな女の人が、この世の中にいるわけだよ!! 大事だろ。排除しちゃダメでしょ。その人は、もしかしたら誰かの、心の中の自分かも知れないじゃん。やっぱり、そこに、そういう人がいるっていうのは大事なこと。だって、生きているんだから。どうやっても、生きていていいというか、しょうがないね、いるんだからって俺は思うだけで。

 -「生きている」という精神は「ゴールデンヒストリー」の作品にも通じる

 大竹 そうだね。障害のある方とか、原爆の被害に遭った方とかが、俺も含めて声を上げていくことに、世間は違和感を持つのね。なぜかと言うと…やっぱり「かわいそうだなぁ」というトーンで見ちゃうから。そうじゃないんだよねぇ。いるんだから。立場は、やっぱり認めるのが当たり前のことで、上でも下でもない、横にいる感じは「ゴールデンヒストリー」の中にも同じようにあるかも知れない。

 次回は、政治から社会まで語りながら「俺はコメディアン」と言い切る大竹が、自らが何者かを赤裸々に語った。【聞き手=村上幸将、山内崇章】