過去を振り返る劇中劇では、樺太での幸せな生活を、吉永や、夫役の阿部寛、2人の子供たちが合唱で表現。一転、ソ連軍侵攻の気配や、夫が行方不明になったことが、スピーディーに展開する。舞台に出たままでの場面転換が連続するが、吉永の動きは滑らかで、周りのパフォーマーとのタイミングはぴったりだ。吉永は「体力がいるものは得意です」と余裕も見せた。

 もともと劇中劇を入れる予定はなかったが、樺太の悲劇を舞台風に抽象化して描くことで、分かりやすくなると決まった。終盤には、NHK紅白歌合戦で北島三郎が見せたような大量の花吹雪も予告した。吉永は「出来上がったものがどうなるか、ものすごく楽しみです。最後は北島三郎さんもびっくりのすごいことになります」。

 今年2月から北海道や東京などで続いてきた同作の撮影は、今月中旬にクランクアップした。【小林千穂】

 ◆「北の桜守」 江蓮(えづれ)てつ(吉永)は一家で樺太で暮らしていたが、終戦後、ソ連の侵攻で土地を追われた。息子たちと網走にたどり着き、過酷な環境を生き抜いた。歳月が流れ、米国で事業を成功させた次男修二郎(堺雅人)が帰国し、年老いたてつと再会した。てつと修二郎は、北海道で過去をたどる旅を始める。吉永は30代後半から60代の約30年を演じる。