「万引き家族」でカンヌ映画祭最高賞パルムドールを受賞した、是枝裕和監督(56)の新作が15日、分かった。日仏合作映画で、原題は“真実”を意味する「ラ・ヴェリテ」。邦題はまだない。仏人女優カトリーヌ・ドヌーブ(74)を主演に迎え、ジュリエット・ビノシュ(54)イーサン・ホーク(47)リュディヴィーヌ・サニエ(39)らが脇を固める。子役は是枝監督こだわりのオーディションで選ぶ。来年公開予定。

 ドヌーブが演じるのは、自らを投影したかのような仏映画界の大女優。自伝出版を機に娘(ビノシュ)が夫(ホーク)を連れて帰省するが、仕事一筋で家庭を顧みなかった母と、女優に憧れつつもなれなかった娘は、対立してしまう。

 「役を生きているとき、役者本人の存在と感情はどこにあるのだろう」。素朴な疑問を抱いた是枝監督が15年前に書いた、劇場の楽屋を舞台にした脚本がきっかけだった。当時は脚本を完成させられなかったが、11年にビノシュと対談をした際、この企画が再浮上。映画の製作が決まると、主人公を演じるドヌーブにヒアリングしながら、脚本を固めていった。

 パルムドール受賞時は、キャストが確定していなかった。受賞直後カンヌから米ニューヨークに飛び、ホークに出演を直談判。「断れない」と言われた。監督はさらに「お金が集まりやすくなっている」と受賞の反響を明かした。「いいと思っていたキャスティングが実現してしまったので、さあどうしようという感じ。頑張ります」。今年10~12月にフランスで全編撮影する。万全の体制で臨む新作には、世界中から注目が集まっている。