北海道を拠点に社長業との二足のわらじで活動するシンガー・ソングライターのオホーツク太郎(64)が31日、東京・蒲田の大田区民ホールアプリコで単独公演を行った。

公演タイトルは「オホーツク太郎ひとり一座」。その名のとおり、2部構成の第1幕では新作講談、第2幕でギターによる弾き語り歌謡ライブと、多芸ぶりを披露した。

歌謡ライブでは自ら作ったオリジナル曲の数々をたっぷり歌った。6月にリリースした新曲「生きていりゃこそ人生だ!」のほか、カップリング曲「あかね色の布団」「この世はゆるくないさ」などを、軽妙なトークを挟みながら熱唱。人生の泣き笑いが詰まったエネルギッシュなステージに会場は大きな拍手で包まれた。

本名は南川保則。オホーツク海水が流れ込むサロマ湖の水を素材とした製塩会社「つらら」(北海道紋別郡湧別町)の社長を務め、社業と音楽活動の割合は「半々」という。大学で上京し、劇団を経てプロの歌手を志しながら故郷の北海道で父から会社を継ぎ、音楽活動を続けてきた。16年にメロディーレコーズから「ほっちゃれ節」でメジャーデビュー。北海道や東京で公演を重ねてきた。

高座と歌謡を盛り込んだステージ構成については「欲張りなんです。やれることは全部やろうと。できないわけじゃないですから。じじいの二刀流ですね(笑い)」。この日は30年以上前に作った楽曲も熱唱した。「原点に戻って、人間のありよう、命、故郷…。そういうものに視点を置き直しているんです」。新曲「生きていりゃこそ-」はいじめやパワハラに苦しみ、生きることに絶望した人たちに「命を捨てるくらいなら、耐えることをやめて逃れよう」と勧める、やさしさのにじんだ楽曲だ。

6月には経営するつらら社の製塩工程などがNHKの人気情報番組「あさイチ」で紹介されるなど、いま注目の“社長シンガー”。「本当に心に感じたことを歌にして、聴いてくれる人、思いを重ねてくれる人に届けていきたい」。社業とともに歌への情熱も尽きることがない。