歌舞伎俳優市川海老蔵(41)が来年5月に、13代目市川団十郎白猿を、長男堀越勸玄君(5)が8代目市川新之助を襲名することを14日、松竹が発表した。この日、海老蔵、勸玄君が東京・歌舞伎座で会見を行った。襲名興行は同所で20年5~7月の3カ月間、行われる。

市川団十郎は、歌舞伎界の頂点に立つ大名跡だ。江戸時代初期に活躍した初代は荒事で人気を得て、団十郎家の家の芸となった「勧進帳」「暫」につながる役で喝采を浴び、以降、団十郎は江戸の代名詞になった。2代目は「助六」を初演し、年千両の給金をもらうなど「千両役者」の語源にもなった。

5代目はさわやかな江戸っ子気質で人気を集め、当時の文化人にも支持され、「白猿」という俳名で句集などを出版した。7代目は名実とも団十郎家を歌舞伎界に君臨させた実力者で、「勧進帳」「助六」などを家の芸とする「歌舞伎十八番」を制定した。8代目は「助六」の水入りで入った天水桶の水を、ひいきの女性たちが争って買ったという逸話があるほどの美男役者だった。

明治に入って活躍した9代目は歌舞伎史上初めて、天皇の前で天覧劇を行うなど、歌舞伎の地位向上に貢献した。「鏡獅子」など「新歌舞伎十八番」を制定し、死後に「劇聖」とも呼ばれた。海老蔵の祖父11代目は戦後、「源氏物語」の光君などを演じ、「海老さま」の愛称で多くの女性ファンに支持された。52歳で襲名したが、4年後に56歳の若さで亡くなった。海老蔵の父12代目は若手時代から坂東玉三郎との「海老玉」コンビなどで人気を集め、85年に39歳で襲名した。04年、息子の海老蔵襲名披露公演中に白血病で入院。その後も病魔と闘いながら舞台に立っていたが、13年に66歳で亡くなった。