10月13日付での退団を発表した宝塚歌劇団の星組トップスター紅(くれない)ゆずるが6日、大阪市内のホテルで会見を開いた。

真っ白なスーツ姿で、首元にはシルバーのネックレス。“泣いて”笑わせる持ち味の人情味を存分に発揮した。大好きな宝塚との別れ、組メンバー、ファンへの感謝の思いがあふれ、思わず涙。「泣かんとこうと思ったのに」「私、いっぺん泣いたら(涙が)止まらないんで」「こんな泣いた(退団会見の)人、いるんですかね」と、号泣しながら、自らにつっこみ続けた。

大阪出身で、02年入団。173センチの長身を生かした華やかな立ち姿と、人情物、軽妙な芝居運びを得意とする“大阪人トップ”らしい、ボケつっこみ。武器をさく裂させた。

16年11月のトップ就任後は、「ドリームジャンボ宝くじ」のテレビCMにも出演するなど、達者な話術を生かして、劇団の“広報”的役割も担い、昨秋には第3回台湾公演にも主演した。

退団については「(17年3月の本拠地)お披露目のスカピン(スカーレット・ピンパーネル)が終わってからすぐ」決めたという。

宝塚のトップスターは、退団時期をめぐって「自分の中で鐘が鳴って知る」と表現することが多いが、紅は「私は一生、鳴らないんじゃないか」。宝塚音楽学校の受験前から、電車を乗り継ぎ通う自身をイメージしていたというほどのあこがれの“聖地”だ。

「もう1度、退団して、もう1度、入団できるのならば、入団したい。音楽学校で制服を着たい。朝の掃除は苦手でしたけど、どんなつらいことも、制服を着られるだけで幸せでした」

あふれる宝塚への愛をこう表現した。離れたくない思いが強過ぎ、自らに区切りをつけるために「5という数字が浮かんだ。(トップ)6作だと中途半端。4作だと短い。5作で退団。そこまでに力を出し切ろうと決めていました。あ(自主ユニットの)紅5(くれないファイブ)ですしね。今思いついたけど、私、うまいな~」と、笑わせながら振り返った。

紅は、トップ娘役綺咲愛里(きさき・あいり)とともに、7月12日に兵庫・宝塚劇場で開幕する「GOD OF STARS-食聖-」「エクレール・ブリアン」の東京宝塚劇場公演千秋楽をもって退団する。同作で、トップ就任から本拠地5作になる。

「(綺咲に)いつ伝えたか覚えてないんで、電話して聞いた。無駄ばなしで1時間ぐらいしゃべっちゃった」と苦笑。綺咲には、昨年4月の「ANOTHER WORLD」公演中に、退団時期を伝えたという。

綺咲も「絶対に紅さんと一緒に卒業します。一点の曇りもないです」と返し、添い遂げ退団が決まった。組のメンバーには、今月3日に伝えた。

「あんまり私が明るく言っちゃったもんだから、皆固まっちゃって『…』みたいな。その後にポロポロ泣いてくれた。うれしかった」

寂しさは胸に押し隠し、おどけて笑ってみせるのが紅らしさ。その様子での退団報告に、組メンバーが戸惑った様子も明かした。

一番の思い出の作品は新人公演初主演で、トップ本拠地お披露目だった「スカーレット・ピンパーネル」。厳しい指導で知られる小池修一郎氏の演出初体験だった。思い出のできごとには「余興が楽しすぎて…。でもここで、人を喜ばせる楽しさ、術、サービス精神を磨けました」とも話した。

退団後については「今は宝塚のことしか考えられない。というか、考えたくない」と言い、進路は未定。「可能性を感じることにであれば、考えたい」とした。

また、恒例の寿退団への質問が出ると「この質問聞かれたかった~っ」とおどけてみせ「ありません。結婚は1人では無理なので」と口にすると、大笑い。ただ、その後、真摯(しんし)な表情で「私は宝塚で綺咲と結婚しましたし、大切なファンの方もいる」と続け、17年の劇団生活を支えてくれたファンに感謝した。