昨年、石原裕次郎さんのヒット曲「夜霧よ今夜も有難う」で歌手デビューした俳優金児憲史(のりひと=40)が、歌手役で日本テレビ系スペシャルドラマ「約束のステージ~時を駆けるふたりの歌~」(22日午後9時)に出演していることが20日、分かった。金児は「俳優として歌を歌うというのはすごく難しかったですが、勉強になりました! これからも歌の幅を広げていきたい」と、充実した撮影を振り返った。

同作は70年代に放送されたオーディション番組「全日本歌謡選手権」をモチーフにした物語で、土屋太鳳、ももいろクローバーZの百田夏菜子がダブル主演。読売テレビ開局60年記念で制作された。

金児が演じたのは、ベテラン演歌歌手。クラブなどで地道に活動しているが、スターを目指して番組に応募する役だ。金児は「去年7月にデビューして、下半期は歌の仕事が多かったんです。今回の作品のオファーをいただいて、お芝居ができる! とうれしかったんですが、また歌手だった」と笑った。

歌手として歌うのと、役として歌うのはまったく違っていた。「歌い姿も勉強になりましたし、裕次郎さん以外の曲を歌うこともなかったので、それも勉強になりました」。撮影では「夜霧よ-」のほかに、尾崎紀世彦さんの「また逢う日まで」、五木ひろしの「よこはま・たそがれ」を歌った。

また同作には、審査員役で五木ひろし、八代亜紀、天童よしみらが出演している。「全日本歌謡選手権」が輩出したスターたちだ。金児は大物歌手の前で歌を披露したことについて「緊張はもちろんしますし、みなさんのすごみが伝わってくるので、ビビりました」と振り返った。特に、五木本人の目の前で「よこはま・たそがれ」を歌った時に、緊張はピークに達したそうで「いやあ、つらかったです…」。それでも撮影中、撮影後、八代に「うまいじゃない」「いい声してる」と褒めてもらったと喜んだ。

70年代が背景のため、当時の衣装や髪形にも注目だ。大きなえりのシャツ、スリーピースのスーツ、尾崎紀世彦さんを思わせるようなもみあげなど、外見から役を作り上げた。衣装はフルオーダーで3パターンあり「自前のスーツが一番合わなかった」と笑わせた。

今後は歌はもちろん、俳優としての活躍も誓う。「目標は徳重(聡)さんです。冗談です」と、活躍中の同期の名前を挙げ笑うと「どんな役をやりたいというよりも、いろんな監督と一緒に仕事をして、その監督の色に染まって、作品の一員になりたい。今回の佐々部清監督の作品は、温かくて人情味があって、役柄みんなに意味がある。大好きな監督なのですごく出演できてうれしかった。これからもっと勉強して、また佐々部監督の作品に出られるようにしたいです」と話した。

「半落ち」「ツレがうつになりまして。」などで知られ、今回「約束のステージ」のメガホンを取った佐々部清監督が金児についてコメントを寄せてくれた。同作は、10年前に映画にしたいと企画、今回スペシャルドラマで映像化がかなった念願の作品だ。金児の起用理由について、佐々部監督は「金児くんが裕次郎さんのCDを出していたからキャスティングしました。金児くんの歌は聞いて、安定感が抜群なので、早々にオファーしました。ベテラン演歌歌手の役は金児くんを当て書きしたところもあります。芝居がほとんどない役ですが、五木さん、天童さんとのからみがあり、そこは俳優でないとダメだと思っていました。歌手が審査員役を演じ、俳優が歌手役を演じるのがおもしろいと思いついたわけです」と語った。

撮影を振り返り、佐々部監督は「(金児は)ちょっと石原裕次郎さんを意識してたかなぁ、そんな雰囲気を感じました。ただ、五木さんの前で『よこはま・たそがれ』を披露するのは辛そうでした(笑い)」。