宝塚歌劇団花組トップ娘役、仙名彩世(せんな・あやせ)が11日、兵庫・宝塚大劇場で、「祝祭喜歌劇 CASANOVA」の千秋楽を迎えた。宮城県名取市の出身。故郷が東日本大震災に見舞われてから8年の日に、丸11年過ごした本拠地に別れを告げた。

「今日は東日本大震災から8年。各地で追悼の行事が行われている日に、私はこうして卒業の祝福をいただける。そのことに、心の葛藤も感じております」

11年3月11日、震災当時、4年目に入ったばかりだった。仙名は、故郷の被災者へ申し訳ない思いを述べた後「ですが、8年前、私は宝塚に戻る、舞台を続けると決めました。あの時、私の背を押してくれたすべての方に感謝します」と続けた。

仙名は08年入団。娘役としては異例、新人ヒロイン経験もなく、同期の珠城りょうが月組トップに就いた後の17年2月に、9年目の遅咲きで、花組トップ明日海(あすみ)りおの3人目相手役に迎えられた。

当代5組トップの中でも「トップ・オブ・トップ」と呼ばれる明日海、そして、劇団最古の花組で、時間はかかったが娘役の頂点に立ち、卒業する。

「そして何よりも、明日海さんの隣に立たせてもらい、明日海さんに磨いていただき、人生が180度、いえ720度変わりました。この場所に、明日海さんの隣にいられるだけで私は幸せです」と、満面に笑みを浮かべて劇場を見渡した。

サヨナラ公演となった今作は、明日海演じる主人公のプレーボーイ・カサノヴァと恋に落ちるヒロイン役。劇中、国外へ出るカサノヴァへ何年でも待つと告げるセリフがあり、これを引き合いに「私は600年でも1000年でも宝塚を愛し続けます」と約束した。

持ち前の歌、芝居、ダンスと3拍子そろった技量を発揮。就任までに悪役もこなし、トップに就いた後も、昨年の「ポーの一族」では明日海の義母役を務めるなど、既存の宝塚のヒロイン像とは一線を画し、新たなトップコンビ像を提示した。そんな仙名に、明日海も全幅の信頼を置いてきた。

明日海は「トップ娘役として完璧にこなしながら、下級生の面倒も見て、そして私の面倒まで見る離れ業をやってくれました」と感謝するばかりだ。

この日、本公演終了後に設けられたサヨナラショーでも、仙名は明日海と息の合ったデュエットダンスを披露。そのショーの冒頭では、娘役を率いて、レオタードにオールインワンのワンピース姿。宝塚の娘役として王道スタイルで、娘役としての原点も示した。そして、最後には、明日海に促され、組メンバーや客席も一体となった「花組ポーズ」の音頭をとり、締めた。

東京宝塚劇場公演は今月29日に開幕。4月28日に東京公演千秋楽を迎え、同日付で退団する。