俳優遠藤憲一(58)主演のフジテレビ系連続ドラマ「それぞれの断崖」(土曜午後11時40分)の3日放送の初回視聴率が3・9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と5日、分かった。

名古屋地区は6・1%、関西地区は5・5%だった。

コンピューターメーカーに勤める志方恭一郎(遠藤)は、中学2年生の息子の家庭内暴力に頭を悩ませていた。ある日、深酒して帰宅した志方に、妻が息子後が帰宅していないと告げる。そして警察から、信じがたい知らせがもたらされた。

家庭内暴力をふるう息子が殺され、加害者は、13歳の同級生。殺人を犯しても少年法で守られ罪には問われない。悲劇の夜、「被害者の父」は酒に酔い、怪しげな店で遊んでいたことが発覚。妻や娘たちに恨まれ、警察からも疑いをかけられる。加えて、加害者少年への怒りを爆発させたことで、人でなし呼ばわりされ、世間からの容赦ないバッシングを受ける。職を失い、家族の絆がほころび、やり場のない怒りを抱えた「被害者の父」。生きる支えは、息子の無念を晴らすこと。矛先を向けたのが「加害者の母」で、はかなげな美しさをもつ、シングルマザー(田中美里)だった。法律に守られた少年の行方や、殺人を犯す少年を育てた母親の動向を知るために、怒りと復讐(ふくしゅう)心から己を偽り近づいてゆく。作家小杉健治氏の同名小説が原作。

第1話で、物が飛び散り荒れ放題のリビングの惨状を前に、志方(遠藤)は「何が原因なんだ」と妻・雪子(田中美佐子)にぼうぜんと問いかけた。

コンピューター会社の企画開発部長である志方の中学2年生の息子・恭介(渡辺蒼)が不登校になったのは、ほんの1カ月前のことだった。それまでは素直でおとなしかった恭介が、別人のようにキレて暴力をふるうようになったのだ。志方夫妻も、長女の真弓(仁村紗和)、次女の真紀(永瀬莉子)も、訳が分からず途方に暮れるばかりだった。

「息子さんも悩んでいるんですよ」。得意先の葵電気の担当者・丹野(梨本謙次郎)の言葉は、苦しむ志方の心を少し楽にしてくれた。丹野が社内の反対を押し切って調整に尽力してくれたおかげで、葵電気と大きな契約が成立したばかりだった。自身も子供の家庭内暴力に悩んだ経験がある丹野は、志方のよき相談相手でもあった。自分の弱みを見せることで子供を理解できるかもしれないという丹野の言葉で、志方は恭介と本音で向き合う決意をする。

志方は、会社からの帰宅途中、恭介が別の少年ともみ合う場面に出会う。八巻満と名乗るその少年は、礼儀正しくあいさつして立ち去った。シングルマザー・八巻はつみ(田中美里)の1人息子である満は恭介の親友だという。けげんに思いながらも志方は、手に持ったたい焼きを思い出し、「恭介、たい焼き食わないか?」と声をかける。

恭介と車で海へ向かった志方は、海岸で自分の過去の恥部を語る。自分のことは話そうとしない恭介だったが、素直に志方の言葉に耳を傾けて「…生きていくのは辛いね…」とつぶやく。久しぶりに息子と心が通い合ったような気がしてほっとする志方だった。

翌日、志方を衝撃が襲う。会社の上層部が、強引に葵電気との契約を破棄したのだ。猛然と上司に抗議する志方だったが、もはや決定事項であり覆せないところまで話は進んでいた。丹野を裏切ってしまった…。志方は謝罪に向かうが、窮地に立つ丹野はそれを受け入れる余裕もない状態だった。

落ち込む志方はその夜、深酒したあげく部下に連れられていかがわしいデートクラブに行く。そのことが、後に自分自身を追いつめることになるとは夢にも思わず…。酩酊(めいてい)して帰宅した志方に、雪子が思いつめた顔で告げる。「恭介がまだ帰らないのよ」。一気に酔いが覚める志方だったが、まだ事態を深刻にとらえてはいなかった。まもなく警察から、信じがたい知らせがもたらされた。