10代や20代の時にはとがっていたのに、年齢を重ねて丸くなり、いい味を出している大人がいます。オーバーフィフティーのX JAPANのYOSHIKIも、その1人です。

8月3日にパシフィコ横浜で行ったライブパフォーマンスを取材した際のことです。

“本業”のピアノ演奏では「FOREVER LOVE」「KURENAI」「ENDLESS RAIN」など9曲を1時間超の時間で演奏。「MIRACLE」の演奏時には人の縁の奇跡について言及し「人との出会いは奇跡なんだと気付いた時には、(メンバーの)hideは他界していた」と涙ぐみ、「僕は父を(10歳で)失い、仲間を失い、生きている罪悪感を持っていた。自分に生きる意味があるのかと…。でも、ここに多くのファンがいる。感謝しています」と言葉を続けました。

激しいドラマパフォーマンスで見せるのとはまったく違った表情です。人の命に真摯(しんし)に向き合い、「生きる罪悪感を持っていた」という言葉は、会場を埋める人たちの心に響きました。

イベント後の取材でも、ユニークな味を醸し出していました。

1996年の「DAHLIA」以来、23年ぶりとなるX JAPANオリジナルアルバム発売がうわさされていると指摘されると「年内には出すと発表したい」と明言。その後で「発表は年内だけど、発売は何年後ねってなったら怒られるよね」と苦笑いしながら付け加えました。

「アルバムを出す」と言い出してから何年たつのか…。「出す出す詐欺」とまで言われていることを承知しているからか、自虐ネタにして笑いを誘います。「今年はXの結成から30周年。何のイベントもないのもすごいですよねぇ~」。まるで人ごとのように言っていました。

自身初のドキュメンタリー映画を製作していることも認めて「7割くらい(出来上がっている)。早ければ年内にも完成します」。その後で「でも、アルバムを先に出さないといけない」と慌てて付け足しました。

漫才のボケとツッコミを1人でこなしているような絶妙トークの連発。アットホームな雰囲気のままに取材は終了しました。途中で、スタッフが「そろそろ時間が…」と会見を止めようとすると「大丈夫だから」とやんわりたしなめます。下手な漫才師よりも抜群に面白いYOSHIKIのトークパフォーマンスでした。【松本久】