CM総合研究所(東京都港区、関根心太郎代表)は16日、新型コロナウイルスの感染拡大によるテレビCMへの影響を発表した。企業が自社CMを控える中、ACジャパンの公共広告が急増しているほか、CMのメッセージにも変化がみられるとした。

ACジャパンのCMの放送回数は、2月下旬までは目立った変化はなかったが、政府が小中高校などに対して臨時休校を要請した2月27日を境に急増。4月1日、2日はそれぞれ111回、118回を数えた。翌日からは減少傾向にあったが、緊急事態宣言が発令された7日には再び同水準に転じた。CM総研では「2011年3月の東日本大震災発生直後ほどの大きな影響はないものの、業種や表現によっては出稿を控えたCMが多かったことがうかがえる」としている。

注意喚起をするCMも増え、東京都は2月10日にCMを開始。同17日からは小池都知事が出演するCMを放送。4月12日には100回を数えるなど、緊急事態宣言を受けてオンエアが急増した。政府広報も「咳エチケット」や助成制度などを伝えるCMを2月中旬から順次開始した。

CM表現にもさまざまな変化がみられたという。レジャー施設では、「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」などが臨時休園中であることを表記してCMを展開。アフラック「ちゃんと応える医療保険EVER」では、新型コロナウイルス感染症が保険の対象だと伝えるテロップが入った。アパマンショップネットワークは「この春、お部屋探しができなかった皆さまへ」をコピーに、来店不要で部屋探しや契約が可能だとするCMを開始。急速に広がったテレワーク関連ではビデオ会議アプリのCMも放送された。

ネスレ日本「キットカット」では、香取慎吾が「いっしょにがんばりましょう」と描かれたアートを制作するCM、ジャパネットたかたは「今だから気付けること」をキーワードに、さだまさしや西川貴教らが医療関係者へのねぎらいや体調管理の徹底を語りかけるCMを放送。「クリエーティブ面でも変化が確認された」という。

3月度(2月20日~3月19日)の放送回数で前年と比較すると、耐久消費財の落ち込みが顕著。特に、自動車の車種CMは前年同月から2000回近く減少。また、4月1日には平均約130編の新CMが放送されるが、今年は01年の観測以来最少の78編にとどまったという。