コロナ禍で放送が中断されていたNHK大河ドラマ「麒麟がくる」(日曜午後8時)が今日30日から、約3カ月ぶりに再開する。

最終的な放送回数などは未定だが、クライマックスの本能寺の変に向けて物語は進展する。主演の明智光秀を演じる長谷川博己(43)がこのほど取材に応じ、コロナ禍での対応や今後の見どころを語った。

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「麒麟がくる」の収録は4月1日に中断され、6月30日の再開まで約3カ月間も休止された。作り上げてきた役作りが途中で止まることになったが、長谷川はあくまでも前向きに受け止めたという。

「世の中は大変なことになっていましたが、急に休みができたことで、もう1度、役について冷静に考えたり、台本を読み直したりできる時間となりました。これまで撮影が続き突っ走ってきて、かなり疲弊していたこともありまして、体も休めることもできました。頭をリスタートしたことで、今のこのコロナで混沌(こんとん)とした世界と、戦国の乱世の時代が重なって感じてきて、ますますこの役をやらねばならないという気持ちが芽生えてきました」。

今後の物語は、光秀が尊敬する足利義輝(向井理)が殺され、光秀は信長(染谷将太)とともに、室町幕府の最後の将軍・義昭(滝藤賢一)を立てて上洛(じょうらく)。将軍の名の下に穏やかな世の中を作るために光秀は奔走するが、義昭と信長が対立。比叡山延暦寺の焼き打ち、室町幕府は終焉(しゅうえん)へと向かい、本能寺の変へと歴史は進む。

一般的な歴史では、信長と光秀が対立し、それが本能寺の変の原因の1つだとされるが、長谷川によると、光秀は信長にシンパシーを感じているという。

「光秀の一般的なイメージは裏切り者、謀反者というネガティブなイメージですが、この『麒麟がくる』は先入観にとらわれずに見ていただきたい。光秀は信長のカリスマ性や求心力を評価していて、この力を使えばよき世を作れると思っていて。光秀の方が信長を演出している感覚なのだと思う」。

さらに、長谷川は歴史の見方にも言及する。

「コロナ禍の中、あらためて自分の中の考え方も変わってきました。歴史は勝者が描くもので、イメージはいくらでもつけられる。光秀は純粋に、穏やかな世界を作りたいという、純粋な武士だったと思います。信念、志がある筋の通った人だったと思います」。

クライマックスの本能寺の変がどう描かれるかは、未定だ。従来の光秀による反逆という視点とはちょっと違う展開も予想される。

長谷川は「僕も本能寺の変には期待しています。先入観がない方がいいと思いますし、個人的には(この描き方が)本当(の歴史)なんじゃないかなと思っています」と話した。【竹村章】

○…収録再開後は、役者はフェースシールドを着用するほか、制作サイドもコロナ対策に追われている。ただ、主な合戦シーンは撮り終えていることもあり、長谷川は「大がかりなロケが終わっていたのは幸いで、スタジオでの撮影は換気や気を配ればいいだけですから。マスクやフェースシールドは煩わしいですが慣れれば大丈夫」。役作りについても「ステイホーム期間中も、光秀がどこかにいました。収録再開後も、すんなりと入ることができました」。