NHKバラエティー番組「夢であいましょう」の主題歌や、映画「楢山節考」主演で知られた歌手、女優坂本スミ子(さかもと・すみこ)さん(本名・石井寿美子=いしい・すみこ)が23日午前3時55分、脳梗塞のため熊本市の病院で死去した。84歳。葬儀は近親者で行う。喪主は、歌手で長女聖子(せいこ)さん。聖子さんは石井聖子として歌手活動も行っている。

 

石井によると、坂本さんは今月2日に倒れ、熊本市内の病院に入院。脳梗塞の診断を受け治療を受けていたが、回復には至らなかった。石井は日刊スポーツの取材に「すごく安らかで、眠っているようで、今すぐ起きてきそう。亡くなったことがまだ信じられないです」と語った。

09年5月にも脳梗塞になった。その時は後遺症はほとんどなく3カ月ほどで復帰。歌手としては16年11月にブルーノート東京で開催した生誕80周年記念ライブが最後の大きな舞台だった。その後もライブハウスなどで歌うこともあったという。93年から17年まで、熊本市の聖母幼愛園と聖母幼稚園で園長を務めた。多忙だったが、いつも「体力が続く限り頑張りたい」と話すなどパワフルだった。

ラテンの女王と呼ばれ歌手として活躍。俳優としても才能を発揮した。83年の映画「楢山節考」(今村昌平監督)では40代の坂本さんが息子に捨てられる老いた母を演じ、前歯を抜くなどの壮絶な役作りで挑んだ。同作がカンヌ映画祭最高賞のパルムドールに輝いた時にはトロフィーを受け取り「おおきに、おおきに」を連発した。かわいらしい坂本さんの素顔と役とのギャップで世界を驚かせた。歌手、女優、子供たちの先生として周囲を明るく照らし愛された存在だった。

◆坂本スミ子(さかもと・すみこ)1936年(昭11)11月10日、大阪市生まれ。高校卒業後、NHK合唱団に入り、58年にラテン歌手としてデビュー。59年、米ラテングループ「トリオ・ロス・パンチョス」の日本公演で前座を務めた。61年、「夢であいましょう」の主題歌、出演で人気になり、紅白歌合戦に5年連続出演。ほかヒット曲「夜が明けて」など。映画「赤い橋の下のぬるい水」など、映像作品も多数。夫は14年に亡くなった皮膚科医で、化粧品ブランド「SK-2」の開発にも携わった石井礼次郎氏。