日本舞踊家で女優の藤間爽子(26)が28日、舞踊家と女優として一時代を築き、09年に亡くなった祖母藤間紫さんの名跡を継ぎ、紫派藤間流3代目家元を襲名した。同日、都内の赤坂日枝神社で継承の儀が行われた。この日は兄の貴彦(29)も改名して、初代藤間翔(かける)を襲名した。

藤間兄妹は継承の儀を終えた後、取材に応じた。3代目紫は「こうして儀式を終えて、正直、まだ実感は湧いていません」と笑みを浮かべた。一方で、多数の取材陣が集まり、翔は「こんなに、たくさんの取材の方に囲まれることはないので引き締まります」と答えた。それを聞き、3代目紫は「ここからがスタートです」と取材対応からも気持ちを新たにすると語った。

この日は師匠であり、2代目紫を継いだ市川猿翁からも、お祝いのメッセージが届いた。猿翁は文書に「初世の遺言通り、『孫の爽子が年ごろを迎えた暁に、3代目家元として藤間紫を襲名させて欲しい」という遺志を実現する時期に達したと思い(中略)継承させる運びとなりました。それに伴い、妹を支えて共に芸道に励む覚悟をした兄の貴彦には、私の生き様を示す『天翔ける心』から藤間翔と命名し、初代として名乗らせることを決めました」とつづった。

当面、女優業は藤間爽子名義で続け、6日にはヒロインを演じる舞台「いとしの儚」が都内のザ・スズナリで開幕する。また28日には、石川県立音楽堂邦楽ホールの「藤間信乃輔舞踊会」で、3代目紫襲名後、初めて日本舞踊の舞台に立ち、舞踊を踊る「(日本舞踊を人前で)最後に踊ったのは1年以上ぶり。コロナ禍で、演奏はテープでやらせて頂きますが、踊らせて頂きます」と語った。

祖母との共演は、6歳の時に歌舞伎座で踏んだ初舞台「鶴亀」で踊ったのが、最初で最後となった。継承の儀を終え、祖母に伝えたいことは? と聞かれると「祖母の踊っていた姿を、もっと見たかった。初代の功績には、足元にも及びませんが…負けません。祖母に負けぬよう頑張ります」と意気込んだ。翔も「目標は猿翁さんでありますので、天翔ける舞踊家になりたい」と誓った。