渋沢栄一の生涯を描くNHK大河ドラマ「青天を衝け」(日曜午後8時)で、ひときわ注目を集めているのが北大路欣也(78)演じる徳川家康だ。

多くは番組の冒頭に登場し、歴史背景などを解説するストーリーテラー的役割を担っている。物語には直接関わらないが、江戸幕府を開いた初代に幕末を語らせる趣向と、「こんばんは、徳川家康です」などと語りかける妙な親しみやすさで、視聴者人気の高いキャラクターになっている。

先日、ドラマの演出を担当する黒崎博氏の合同取材会が行われ、この「家康コーナー」について語ることがあった。黒崎氏は反響について「面白いと言ってくれるのがすごくうれしい。とっぴな仕掛けなので、どういう風に見てもらえるかドキドキしていました」。撮影当初、これまでにない家康役に戸惑いの色が見えたという北大路についても「大きな反響を北大路さん自身が喜んでくださって、『次の回、僕は何をやればいいの?』と楽しみにしていただいている」と、その様子をうれしそうに語った。

ドラマが進み、明治に時代を移したあかつきには「家康の登場がなくなるのでは」と心配する声もある。ただ、回を重ねるごとに家康が解説役にとどまらない存在感を発揮しており、黒崎氏は「いつの間にか、北大路さんご自身も劇中の家康さん自身も立場を超えて、栄一少年が頑張っていたり、誰が矛盾に満ちたことを言っていたら腹を立ててみたり。理屈の立場を超えて物語を見守る人になっている気がする」。また「幕府が終わったら出てくる理由がないかと言うと、そんなことはないのかも知れない。僕としては、ぜひ栄一を最後まで見ていて欲しいなと思っています」と話した。

今後の家康を「どういう風に描いていくか、今みんなで考え中」としたが「引くに引けなくなった」とも話しており、家康ファンは期待してもよさそうだ。

直近9日放送の第13話は、ドラマの放送開始から初めて家康が登場せず、これまた話題を集めている。出ても出なくても注目される北大路家康。いつか物語本編に関わることがあれば、さらに盛り上がりそうだ。【遠藤尚子】