5月末に甲状腺乳頭がんの手術を受けた落語家立川談笑(55)が13日、東京・国立演芸場の「立川談笑独演会」で高座復帰した。

大きな拍手で迎えられると談笑は顔を押さえ感極まった様子。甲状腺を全摘出する手術で、声帯に近い場所のため、声が出にくくなったりかすれる可能性もあった。

この日、談笑は開口一番「声が出ます!」。腫瘍は58ミリの大きさになっていたが、声への影響はなかった。

診断時や入院時のエピソードなどを明るく振り返り「しゃべれるのがうれしくてしょうがない」などと話した。「愛宕山」など3席、2時間以上にわたる熱演で、最後は「このような具合で帰ってまいりました。元気でございます」とあいさつした。

終演後、取材に応じた談笑は「感極まりました。想像以上でした」としみじみ語った。

手術を受けることを公表した際、声に影響の出る可能性も明かしていたが、実際は医師から「ラッキーだったらしわがれ声」と告げられるほど危険な状況だったという。談笑は「まさに談志が苦しんだあの状態を思いました。思うように声が出るのは、(手術前の)先月で最後だと思っていました」と、喉頭がんで闘病した師匠の立川談志さんのことを振り返った。

手術後、声が出た時は「予想してなかった。現実味がなかった」そうで、うれしくてドレミの音階を声に出してみたりしたという。

手術直後は、舌の筋肉がこわばったり、言葉の最初が無声音になることもあったが、リハビリをしつつ稽古量も増やした。復帰高座は「思ったより舌が回りました」と話した。ただ、話せなくなった場合、弟子が代わりを務められるようスタンバイしていたことも明かした。

今後はホルモン治療、定期的な検査で様子をみていく。談笑は「音、響き、メロディーを意識するようになりました。自分が今、出せる声、音を使った落語にこだわろうという気持ちを持ちました」と、声を出せる喜びを語った。

27日の岡山市での柳家花緑との「二人会」や、来月4日の国立演芸場での独演会など、今後も精力的に活動する。