新型コロナウイルスの新規感染者数が減少していると連日、報じられている。厚労省は9日、円滑な対策推進するために必要となる医療・公衆衛生分野の専門的、技術的な事項について必要な助言等を行う「新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード」の第58回の分析・評価の公表を行った。その資料の中でも感染状況について
「全国の新規感染者数(報告日別)は、今週先週比が0.76と減少が継続し、直近の1週間では10万人あたり約1と、昨年の夏以降で最も低い水準が続いている。また、新規感染者数の減少に伴い、療養者数、重症者数や死亡者数も減少が続き、重症者数は昨年の秋以降で最も低い水準になるとともに、死亡者数は今回の感染拡大前の水準を下回った」
としている。取材で都内を回っていても、マスクをしなかったり、集団で飲み会を開いたようなスーツ姿の一団を見かける機会が増えた。
そうした中で日々、取材していて心に刺さり、今でも残っているのが、西島秀俊(50)の言葉だ。西島は6日、都内で行われた東京国際映画祭が国際交流基金アジアセンターと共催した「トークシリーズ@アジア交流ラウンジ」で、カンヌ映画祭で最高賞パルムドールを受賞した経験を持つ、タイのアピチャッポン・ウィーラセタクン監督(51)とオンラインで対談を行った。その中で、コロナ禍によって映画製作の態勢やテーマが変わったかと質問が飛んだ。
西島は「やっぱり…作り手の心にも当然、影響を与えているので、それが作品に反映されていると思います。具体的にコロナということを描いているかというと…そのことで、みんな悩んだりもしていると思います」と語った。その上で、作り手の「悩み」について具体的に言及した。
「コロナで実際、世間はマスクをしているのに、フィクションのドラマや映画の中で、マスクをしていないというのが、数年前の記憶が、まだ、みんなあるので成立していますけど、現実とはズレ始めているわけですよね」
特に、記者の心に刺さったのは、次の言葉だ。
「実際、子供たちはマスクをしている人たちを見るのが、当たり前で育っていたりするわけなので…。そういうことが(作品に)どう反映していくのかというのは、みんな考えてもいるし、もちろん、何よりも自分たちの心が、すごくそのことに影響されているし、作品の内容、演じる側も延期していて大きく影響されていると思います」
正直な話、記者は映画やドラマを日々、仕事として見ていても、日常を描くシーンで登場するキャラクターがマスクをしていないことに違和感を覚える。一方で、コロナ禍の最中にリモートで作られたドラマの中で、マスクを着けていることが強調されたようなシーンを見た際は、現状を正確に落とし込んだ作品であると分かってはいても、逆に悲しさやむなしさを覚えた。
西島が語った、作り手の試行錯誤を感じたのが先日、発表されたBSテレビ東京で22年1月10日からスタートする、武田梨奈(30)主演のドラマ「ワカコ酒 Season6」(月曜深夜0時)だ。武田演じる「酒飲みの舌」を持って生まれ、さまざまな酒場をさすらい、女ひとり酒を堪能する26歳のOL村崎ワカコを描くドラマだが、制作サイドは、あくまで架空の物語として描き、コロナ禍を直接、物語やセリフに反映させないと説明した。一方で、原作にもエピソードとしてあったファミレス飲み、お取り寄せなど、コロナ禍の新しい生活様式で推奨された飲食の手法も盛り込むという。
また現在、全国の各局で放送中の、市原隼人(34)の主演ドラマ「おいしい給食 season2」は、80年代の中学校が舞台のため登場人物は当たり前だがマスクをしていない。記者は昨今、見られない風景を懐かしく思うが、西島が指摘するように、マスクを着けての学校生活、給食は黙食が当たり前の児童、学童、生徒にとっては違和感を覚えるだろう。
映画やドラマの中で、芝居をする俳優がマスクをしていたら、表情はまるで見えず、作品は成立しがたいだろう。俳優がマスクを着けず、芝居を見せる作品にするとしても
<1>現代劇をあくまで架空の世界、物語として描く
<2>コロナ禍前の世界を描くことで、なんとか折り合いを付けるのか
俳優を含め、作り手は悩ましいところだろう。西島が指摘するように、受け手の側がコロナ禍の日常に慣れてしまっている以上、どうしたって違和感は生じるだろう。
芸能というフィールドにおいても、コロナ禍における映画やドラマの製作現場の状況や、芸能人のコロナ感染報道のあり方など、継続して取材し、報じてきた。西島の話を聞いて、俳優や製作者に2年目となったコロナ禍の中、心理面や作品作りに、どのような影響があったかを聞きたい。その上で今後、日本の映画、ドラマはどのような方向に進み、どういう作品になっていくと考えるかを語り合いたい。機会をつくって取材を進めていこうと考えている。【村上幸将】



