昨年大みそかの「第72回NHK紅白歌合戦」第2部(午後9時)の平均世帯視聴率が、関東地区で34・3%(関西地区35・0%)を記録し、紅白史上最低だったことが2日、ビデオリサーチの調べで分かった。前年の40・3%から大きく6・0ポイント下げ、最低を記録した19年の37・3%をさらに下回った。第1部は31・5%(関西地区31・1%)で、前回から2・7ポイントダウン。個人視聴率は第2部で24・8%(関西地区24・9%)だった。

   ◇   ◇   ◇

歴史ある紅白歌合戦は今、過渡期を迎えている。司会の呼称を「紅組」「白組」「総合」に分けず、3人とも「司会」に統一。チームカラーが意識されていた衣装もイメージを変え、大泉洋は紫、川口春奈は黄色、和久田麻由子アナウンサーはピンクで登場するなど象徴的だった。今回のテーマ、「Colorful~カラフル~」に合わせた形でもある。

同局はテーマ発表時「多様な価値観を認め合おうという思いも込められています」と説明。同局一坊寺剛チーフ・プロデューサーによると、チームごとに出場者を応援する司会構造について「この時代に戦いをあおるのは違うのでは」と議論した結果という。

時代とともに番組も変わるものと理解する一方、優勝旗の授与が省略され、番組が盛り上がる一場面がなくなってしまったとも感じた。今回紅組が勝利したが、前年白組司会だった大泉は「紅でしたか。審査員は白でしたけどね」と少し残念そうにコメント。「全ての出場者を応援する存在」という新しい司会の立ち位置も、この瞬間だけは難しそうに見えた。同時に終盤のヤマ場がなく、尻すぼみに終わったという印象も受けた。

性の多様性の面では、男女を「紅」「白」に分けることに疑問を示す声もある。男女混成は1つの案かもしれないが、投票する視聴者へのわかりやすさを欠くことになる。多様性を意識しつつ、明解な紅白に。演出面でどうクリアしていくのか、今後の課題だろう。【遠藤尚子】