歌手加山雄三(85)が年内でコンサート活動を終了すると19日、発表した。歌への熱い情熱は持ち続けているが、85歳という年齢を考慮して「歌えなくなってやめるのではなく、まだ歌えるうちに」との思いから決断。9月のホール公演と12月の船上ライブが最後のコンサートになる。

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80歳を超えてから、加山は多くの試練に向き合ってきた。

18年には愛船「光進丸」が焼失。19年にはトレーニング中に腰を圧迫骨折。それでもツアーは予定通り行ったが、途中で脳梗塞を発症した。20年には誤嚥(ごえん)からの脳内出血を発症。リハビリに励んでコンサートを開催できるまでに復活した。今年3月21日にはビルボード横浜でライブを開催し、“永遠の若大将復活”を印象づけた。

だが、同4月に85歳を迎え、今後の活動について家族やスタッフを交えて相談を重ねたという。そして「アーティストとして100%満足いくコンサートを(ファンに)提供し続けていけるのか」などと思い悩み、年内でコンサート活動から卒業する決断をした。

加山は「60年もの間、音楽を作り歌い続けてきました。そしてたくさんの人との出会いと、幸せをいただきました」とファンに感謝。「年をとることでさまざまなことを続けていくことの大変さを実感しております。しかしながら、その時々で精いっぱい目の前のことに真摯(しんし)に向き合ってきました」と、ここ数年で相次いだけがなどを振り返った。

61年に「夜の太陽」で歌手デビューして62年目の大きな決断。芸能界は引退しないが、来年以降の歌手活動については現在、何も決まっていないという。「コンサート活動は年内をもってケジメをつけようと思いますが、これからも音楽は親友であり大切にしていきたいと思います」。

ラストステージも合わせて発表。ホールコンサートは9月9日に東京国際フォーラムホールAで開催。12月には愛する海に浮かぶ豪華客船飛鳥2で船上ライブを行い、最後のコンサートとなる。「最後のライブ、みなさんで楽しみましょう!」。永遠の若大将はラストステージを心待ちにしている。v

◆加山雄三の主な歌手活動 慶大法学部在学中の20歳の時、6人編成のバンド「カントリー・クロップス」を結成し、サイドギターとボーカルを担当した。

61年7月に「夜の太陽」で歌手デビュー。65年発売の「君といつまでも/夜空の星」が爆発的なヒットとなり、66年に日本人初の日本武道館コンサートを開催。同年のレコード大賞特別賞を受賞。大みそかの紅白歌合戦にも初出場した。94年にはハワイの「第15回 祭りインハワイ」に参加してコンサートを実施。05年には米国のカーネギーホールで公演。14年には日本武道館で最高齢(77歳)ワンマン公演を開催した。弾厚作の名義で作詞作曲も行い、紅白歌合戦には10年までに17回出場してる。

◆加山雄三(かやま・ゆうぞう)本名・池端直亮。1937年(昭12)4月11日、神奈川県生まれ。父は俳優上原謙、母は女優小桜葉子。慶大を卒業した60年に東宝入社。同年に映画「男対男」で俳優デビュー。61年に「夜の太陽」で歌手デビュー。同年から映画「若大将」シリーズで人気スターとなり、黒沢明や岡本喜八ら巨匠の作品にも多数出演した。歌手としてNHK紅白歌合戦に17回出場。14年に旭日小綬章、21年に文化功労者に選出された。