4日付の日刊スポーツ「日曜日のヒロイン」で、元TBSアナウンサーの吉川美代子さん(68)を7年ぶりにインタビューした。

同じメディアの世界にいながら、あちらはテレビの報道キャスター、こちらはスポーツ新聞の芸能記者。日本とブラジルくらい大きく離れているが、また背筋がピシッと伸びる思いがした。

7年前にインタビューした時に「長年、女子アナの取材で飯を食って来ました」とチャラつきながら話を聞くと「女子アナなんて職業はないのよ」と怒られた。

とはいえ、フジテレビの河野景子、八木亜希子、有賀さつきの3人娘に佐藤里佳、中村江里子。日テレでは“DORA(ドラ)担”として永井美奈子に米森麻美、藪本雅子の3人。TBSでも“TBSの浅香唯”こと長峰由紀、秋沢淳子、そして渡辺真理と“女子アナ”取材歴は長い。

女子アナ取材のキャリアを話すと、吉川さんは報道志望でありながら「女にニュースは読ませない」と言われた悔しかった過去の思いを話してくれた。そして、その偏見を覆すための努力を話してくれた。

かといって芸能番組が嫌だったわけではない。若手時代は音楽番組「ザ・ベストテン」の“おっかけウーマン”として山口百恵番を命じられて、生中継を担当していたことを話してくれた。

今回の取材では、さらに産休に入った女性アナの仕事復帰について、熱い思いを語ってくれた。自身が志望の報道番組でキャスターを務めるまで苦労しただけに、産休で番組を降板、復帰のために再び苦労を重ねる後輩たちの姿が許せなかったのだろう。「産休の女性アナウンサーは、無条件で元の番組に復帰させるべき」とエールを送ってくれた。

今回の取材でも、吉川さんのテーマとも言うべき「女子アナという職業はない。アナウンサーです」という言葉をいただいた。その言葉に世の中の流れを実感した。7年前は「女子アナという職業はない。女性アナウンサーです」だった。この7年間にLGBTをはじめとする世の中のさまざまな性に対する理解も深まり、女性だ、男性だと区別することが意味のないものになっている現実を思い知った。

個人的には過去30年以上新宿2丁目のゲイバーに通って、ネタを拾い、カラオケを歌ってきただけに、真剣にLGBTを論じることを面倒だと思ってしまうこともある。それでも、チャラな芸能記者を真面目な放送記者に戻してくれる、吉川さんの取材は貴重な体験だ。【小谷野俊哉】