俳優渡辺徹(わたなべ・とおる)さんが11月28日午後9時1分、敗血症のため亡くなった。61歳。所属する文学座が発表した。同20日から入院し、治療を受けていた。妻はタレントで女優榊原郁恵(63)、長男は俳優渡辺裕太(33)。後日2人が会見を行う予定。家族の意向で葬儀は家族葬で執り行い、後日、お別れの会を行う。

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文学座の発表によると、渡辺さんは先月20日に発熱、腹痛などの症状が出たため都内の病院を受診したところ、細菌性胃腸炎と診断され入院した。その後、敗血症と診断され治療を受けていたが、回復がかなわなかったという。

渡辺さんは体調を崩す前日19日には、秋田市で「心臓病とともに元気に生きる」と題した医療フォーラムにゲストとして出席していた。関係者によると、体調に変わった様子は見られなかったという。インスタグラムには関係者への感謝とともに、秋田名物の駅弁の写真をアップ。毎日のインスタ更新もこの日を最後にストップし、心配の声も上がっていた。

10月から11月にかけては、東京、大阪、仙台で上演された舞台「今度は愛妻家」に出演。バーのママ役で、10月6日の初日前取材では体重を絞った姿を見せ「最盛期の体重は130キロ、今は73キロ。すべて妻のおかげです」と話していた。11月6日の同作の仙台公演が、俳優としての最後の仕事となった。

渡辺さんは長年、病と闘い続けてきた。91年、30歳の時に急性糖尿病で入院。12年4月には虚血性心疾患で心筋梗塞の状態に陥り、同5月にカテーテル手術を受けた。退院報告会見では、ピーク時130キロ、入院前は90キロの体重が79キロになったことを明かし「新しい服を買わなくてはいけないので不経済かな」と苦笑いした。13年には急性膵炎(すいえん)で入院。昨年4月には急性気管支炎を患い、ミュージカル「アリージャンス~忠誠~」を途中降板した。治療中に大動脈弁狭窄(きょうさく)症と診断され、その後手術を受けている。

体調を崩し、番組や舞台を降板せざるを得なくなることに、渡辺さんはじくじたる思いを抱いていた。昨年の取材では「役者として大失格でした」と悔しそうに語った。それだけに、大動脈弁狭窄症からの復帰舞台には並々ならぬ思いを抱いていた。週2回の有酸素運動の心臓リハビリと筋トレを行い、健康体を取り戻そうとしていた。榊原も「いろいろ検査してもらい、かえって良かった」と安心した様子だった。

病と闘った経験を多くの人に伝えるため、講演も積極的に引き受けた。体重の増減を繰り返したことも包み隠さず語り、健康第一を訴えた。舞台、ドラマ、バラエティー、声の仕事と多岐にわたって活躍し、親しまれる存在だった。近年は役者としての渋み、円熟味が増してきていただけに急逝が惜しまれる。