「宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道999」「宇宙海賊キャプテンハーロック」などのSF漫画で知られる、漫画家の松本零士(まつもと・れいじ)さん(本名・晟=あきら)が13日午前11時、急性心不全のため都内の病院で亡くなった。85歳だった。20日、個人事務所「零時社」が発表した。告別式は近親者のみで営み、喪主は妻で漫画家の牧美也子さんが務めた。最近、体調を崩し、入院していた。

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松本さんは、とにかく話し好きだった。直撃にも気さくに応じ、語り出すとなかなか止まらない時もあった。その中「宇宙海賊キャプテンハーロック」のルーツが小学生のころ、自分の中に自然と湧いた言葉にあると明かしたことがある。

「終戦直後、ボロボロの時代ですよ。鹿児島本線(の汽車)がゴーッと汽笛を鳴らし、煙を噴いて走る脇を『ハーロック、ハーロック』と号令をかけながら歩いた。『ハーロック』という言葉が自分の中で自然発生的に生まれた。どこで、なぜかは分からない」

当時、松本さんは「大航海をしたい」と夢を抱いていたという。「その言葉(ハーロック)が自分の夢につながり、天文学マニアだったものだから宇宙にまで乗り出していった」と、創作の翼が広がっていった。

ハーロックが乗る戦艦アルカディア号の象徴に、髑髏(どくろ)の旗印を選んだ理由を語った際は力がこもった。「骨となっても俺は戦うという意味。世界中、何も分け隔てなく全員、対等だということ。人を脅かすためじゃなく俺の旗の下、俺は自由に生きていく、骨になっても戦う。相当、昔からあるマーク…これは人類の夢」と語った。

戦うという言葉を口にしながら、世界平和を希求していた。根底には「我々は日本国落城の瞬間を味わった、亡国の民として生きた世代。その思いが心の底から染み込んでいるわけです。そこから立ちあがって行く姿を見ている」敗戦で味わった思いがあった。

自ら世界を渡り歩き「ワニやピラニア、サメがいるところも泳いだ。そういうところの人々と、ものを食べた」中「世界中、勝ち負けいろいろあり、歴史は繰り返すけど、地球上の人類の思いは、皆、同じ」と感じた。その思いが「参考資料」となり「世界中の人の夢を宇宙で咲かせたいというのが、ハーロックに込めた基本的な夢」となった。

一くだり、語ると、松本さんは「ハーロックは、何があろうともビクともしない。何が起ころうとも、覚悟の上で宇宙を自由に、自分の夢に向かって飛んでいる」と笑った。松本さんは理想の生きざまを、ハーロックに投影していたのではないか。【村上幸将】

◆松本零士(まつもと・れいじ、本名・晟=あきら)1938年(昭13)1月25日、福岡県久留米市生まれ。福岡県立小倉南高時代に「九州漫画研究会」を結成。デビューから68年までは「松本あきら」をペンネームにしていたが、65年から併用していた「松本零士」を68年にペンネームとして一本化。零士には、0歳の時の感覚や感性を忘れないという思いを込めていたという。01年に紫綬褒章受章、08年に練馬区名誉区民、10年に旭日小綬章受章。