米アカデミー賞授賞式が12日に開催されるのを前に、米俳優トム・クルーズ(60)主演の映画「トップガン マーヴェリック」について、製作費の資金提供を巡って「アカデミー賞のノミネートから除外」するよう求める声が上がっていることが分かった。

米ニューズウィークリー誌によると、カナダのトロントを拠点とするウクライナ人やコミュニティーを支援する非営利団体ウクラニアン・ワールド・コングレス(UWC)が7日、アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーに宛てた公開書簡でロシアのオリガルヒ、ドミトリー・リボロフレフ氏が資金提供していたと報じられていることを理由に候補入りした同作の資格を見直すよう求めているという。

「トップガン マーヴェリック」は、作品賞を含む6部門にノミネートされている。投票は7日に締め切られており、投票結果への影響は限定的なものだと見られている。コロナ禍で落ち込んだ映画業界を救う大ヒットとなった同作は作品賞に値するとの声が高まっており、受賞も期待されている。

リボロフレフ氏は、ロシアのウクライナ侵攻を受け、ウクライナの制裁対象に名を連ねている。UWCのグロッド会長は、書簡の中で「ロシアがハリウッド映画産業に及ぼす影響について深刻な懸念がある」と述べ、資金提供に関与したことで台本の内容に干渉した可能性を指摘。ストーリーの中にロシアが出てこなかったのは、リボロフレフ氏の意向によるものではないかと推察している。

米ロサンゼルス・タイムズ紙が今年初めに、プロダクション会社ニュー・リパブリック・ピクチャーズのフィッシャー元代表が契約を巡って会社を訴えた裁判の中で、リボロフレフ氏が出資で重要な役割を果たしたと主張していると報じていた。

「肥料王」として知られるリボロフレフ氏は、95年にロシア最大の化学肥料の原材料であるカリを生産するロシアのウラルカリ社の会長に就任し、2010年に同社の株式を65億ドルで売却し、その翌年に仏サッカーチームASモナコを買収してオーナーとなった。08年には、トランプ前米大統領がフロリダ州パームビーチに所有していた物件を購入したことでも知られる。(ロサンゼルス=千歳香奈子通信員)