俳優大鶴義丹(55)が劇団桜舞の舞台「誠の挽歌」(12月13~17日、東京・渋谷伝承ホール、脚本・演出ひらき)に出演する。

新選組を離脱して、かつての仲間から暗殺される伊東甲子太郎(かしたろう)を演じる。このほど、取材に応じた。

伊東は水戸学に通じ北辰一刀流の達人。1864年(元治元)に参謀として新選組に加盟。主演の西村真士(46)演じる組長の近藤勇と対立して67年(慶応3)に離脱。同志とともにともに御陵衛士を結成するが、同年暮れの油小路の変で新選組隊員に暗殺された。 大鶴は2002年(平14)のテレビ東京系「壬生義士伝~新選組でいちばん強かった男~」で、伊予松山藩の中間から新選組隊員になった原田左之介を演じたことがあった。

「その時に、今の僕くらいの年齢の方がたくさんいて、怒られながらやってました。30歳くらいだと、なかなか時代劇の神髄が、役者として味わいきれないというか。やっぱり若いから、もうちょっと実生活のリアリティーのあるものをやりたがっちゃうんですよね。グルッと時代が、そこから2つぐらい変わると、今回やっていて『いやー、時代劇面白えなー』と」

新選組を描く時、近藤勇、土方歳三、沖田総司が描かれることが多い。

「僕が演じる伊東甲子太郎って、特に新選組が好きな人からすると、近藤勇がヒーローで伊東甲子太郎がヒール、悪役みたいな形で描かれることが多いんです。ただ冷静に分析すると、新選組っていう組織は旧幕府体制の中になりますので、考え方自体はやっぱり今の時代と相反しているものになるんです。その中で伊東甲子太郎っていうのは、水戸学を学んで、いわゆる今の日本に近い考え方を持っていた人物なんです」

現在55歳。時代劇が楽しいという。

「時代劇って、なんだろう。やっぱり面白いんですよね。じじいになるとね、若い頃は入って来なかったものが自然と入って来るようになる。ややこしい芝居とか楽しくて。舞台の仕事が多くなってきたのって、結構中年になってからなんですけどね。やっぱりね、実生活がそんなに幸せにあふれてないからだと思うんですよね。若い子たちがリアリティーのある作品を求めるのとはまた逆に、リアルじゃないところを探求したいという役者としての気持ちというか」

50代の折り返しにもさしかかっている。

「若い頃と比べて、演じるということで変わってきました。いろいろなタイプがあるんですけど、僕は実生活がかなりにじみ出てきちゃうので、芝居がどんどん面白くなって来る。実生活がそんなに楽しくないと、役者って楽しいんですよ。若い時は何だって楽しい。実生活の方が楽しいから、そんなに集中力が出ないんです。若い時に、おっさんの俳優がしつこく台本を何度も読んでるのを、他にやることないのかなって思っていたんですけど、自分がその年になったらその通りになりました。おのずと集中できる。体力なくて酒も朝まで飲めないし、女の子にもそんなにモテないし、一生懸命勉強するんですよね」

デビューしたのは16歳の時。父は「状況劇場」を率いた唐十郎(83)。2年前に79歳で亡くなった母は「アングラの女王」の異名を取った李麗仙さんだ。

「もう40年、たっちゃいましたね。親の影響というか、何となく自分の家が中華料理店さんだったから、そのまま鍋振っちゃった…みたいな。でも、やっぱりそれだけじゃ通用しないんでね。若さが失われていく時代も経験したし、見よう見まねだけじゃ通用しなくなって違うことを勉強しに行ったこともある。30代になって、若さが失われてきた時ってすごくショックでした。ちゃんと大人にならなきゃいけない。そこははっきり区切られてたんで。そういう時代でした。今はもう分かんないじゃないですか」

今の時代、55歳の役者の先は、まだまだ長い。

「だから先輩の方と仕事すると、最近面白くて。僕の中で15年前って、ちょっと前なんですよ。でも、15年後って70歳で、下手したら役者をやってるか、やってないか分からないなみたいな感じですよね。だから先輩と仕事すると、自分はどのタイプになっていくのかなって、ちょっと考える時がありますね。若い、若いって言っても、あるところで本当におじいちゃんになる人もいるし、流れのままちょっとずつちょっとずつの方もいるしね」

年を取って来て、舞台の仕事がしっくり来るようになった。

「やっぱり役者の仕事って、コスパが悪い。拘束時間と比べれば、とてつもない努力をしなきゃいけない。それは、好きじゃないとね。あと、稽古が好きかですよね。好きじゃないと、やっぱりできないですね。50代になって舞台の仕事がすごく増えたんです。今年この1年で、5本やってるんですよ。でも、やっぱり健康になるんですよ。舞台の仕事をやっていると、くだらないこと考えてる暇もないし、ぐずぐず悩んでいられない。だから、僕は歌舞伎の人ってうらやましいというか、舞台だけでずっと食えたら、これは意外といい人生だなって。映像の仕事を入れずに、舞台だけで食えるなんて歌舞伎の人と、イギリスのロイヤル・シェークスピア・カンパニーの人だけ」

役者として、舞台も映像の仕事もこなしている。

「僕も役者でお仕事させてもらってて、もちろんドラマの方とか舞台もさせてもらっていますけれど、正直言っちゃうと舞台の方が役者やってるなっていう感じがするんですよ。映像ってシーンごとに撮影日も変わりますし、撮影が始まってもカット割りがあるから気持ちがつながらなかったりとか、そこがまず難しい。ややこしい舞台は、ステージに上がっちゃえばとりあえず物語一本で歩けるじゃないですか。あと何より、お客さまが目の前にいるっていうのがあるから。やっぱり自分が表現者として仕事をやっているなっていうのが、そこで自覚できるんですよね。映像だとカメラの裏側にスタッフしかいないわけじゃないですか。カメラの向こう側にはちゃんと場がありますけど、全然別物ですよね。僕はもう本当に全くの別っていう風に考えているんです」【小谷野俊哉】

◆大鶴義丹(おおつる・ぎたん)本名・大■(■は雨カンムリに鶴)義丹。1968年(昭43)4月24日、東京都生まれ。父は劇作家、作家の唐十郎、母は女優李麗仙。84年NHKドラマ「安寿子の靴」でデビュー。「君の瞳に恋してる!」「逢いたい時にあなたはいない…」などのドラマで人気に。日大芸術学部文芸学科在学中の90年(平2)に作家として「スプラッシュ」ですばる文学賞を受賞。95年映画「となりのボブ・マーリィ」で監督デビュー。19年舞台「小鳥の水浴」で舞台演出家デビュー。180センチ。血液型A。