日本映画が米アカデミー賞で金字塔を打ち立てた。「ゴジラ-1.0」が、アジア初の視覚効果賞を受賞した。

山崎貴監督(59)は米ロサンゼルスのドルビー・シアターの壇上で、金色のゴジラのフィギュアを左手、初めて獲得したオスカー像を右手に歓喜した。また宮崎駿監督(83)が「君たちはどう生きるか」で、03年「千と千尋の神隠し」以来21年ぶり2度目の長編アニメーション映画賞を受賞。邦画のダブル受賞は09年以来15年ぶり3度目だが、長編の2本同時受賞は、96回の歴史で初めてとなった。

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ジョージ・ルーカスが「スター・ウォーズ」シリーズを撮影するために作り、今や特撮の総本山のような存在となったILM(インダストリアル・ライト&マジック)が関わった他のノミネート4作品を倒し、「ゴジラ-1.0」が視覚効果賞を取ったことに歴史的因縁を感じる。

70年前の第1作「ゴジラ」では、製作期間が短かったため、当時人形アニメなどで主流だった「コマ撮り」ではなく「着ぐるみ」方式が採用された。手作り感のある日本ならではの技法は「最先端」として発展を続けるが、15作を区切りに昭和ゴジラのシリーズが一段落した75年、くしくもILMが開設された。

以来、世界市場を相手にした圧倒的な資金力とコンピューターの技術力でコマ撮り手法は飛躍的に発展させ、「スター・ウォーズ」以外にも「タイタニック」「ジュラシック・パーク」…ILMは半世紀にわたって特撮をリードしてきた。

そのILMへの憧れから映画の世界に足を踏み入れた山崎貴監督は今回、200億円規模とされる米作品のほぼ10分の1の予算とスタッフで快挙を成し遂げた。例えば、水上シーンでゴジラが上げる水しぶき一粒一粒の飛行方向まで粘り強く表現した。コンピューターは使っても、ゴジラの原点ともいえる「手作業」的な緻密さが世界のILMを上回ったのである。【相原斎】