伊勢谷友介(47)が13日、都内の日本外国特派員協会で行われた映画「ペナルティループ」(荒木伸二監督、22日公開)会見で、日本の民主主義は「お任せ民主主義」だと持論を展開した。

伊勢谷は劇中で、主演の若葉竜也(34)演じる岩森淳の最愛の恋人・砂原唯(山下リオ)を殺した犯人の溝口登を演じた。大きな喪失感を抱え、自らの手で犯人に復讐(ふくしゅう)することを決意し、綿密な計画を立てた岩森に殺されたはずが、翌朝になると時間は昨日に戻り、溝口も生きており、何度も殺される役どころだ。

伊勢谷は「脚本を読んだ時、疑問があったのでは? 監督にぶつけたか?」と聞かれると「すごく質問に、たくさん思うところがあった」と口にした。その上で「役者は映画の役を演じる時、自分の全てではなく出すのは一部。僕のキャラクターは社会の仕組み、ルール、規制にがんじがらめになったまま、流されて世の中で生きたキャラクターだと思った」と役どころを評した。その上で「そういう生き方は多分、日本においては、ほとんどの人がやって、実際には日本を壊したいという動きで生きていける人は、ほぼいないと思う」と日本人を評した。

さらに「本来、日本人って世の中に引っ張られるように、ほとんど奴隷のように生きていて。民主主義として、自分たちで世の中を変える気なんか、さらさらない。“お任せ民主主義”と言われていますし。実際に自分たちで世の中を変えるというモチベーションを持っている人は、ほぼいないというのが今の状況」と日本社会を評した。

その上で、自らの役どころを踏まえ「10回、殺される仕組みに僕のキャラクターは、ただただほだされていく。ある種、今の日本人を体現しているキャラクターだと思う。逆に言えば、それがアンチテーゼになって、死刑というものを我々が主体的に考える機会になって欲しい」と死刑制度に話を受けた。「そもそも、どうやって我々が生きていくか、ということの問いになって欲しいと映画を作り終わってからテーマとして出てきた」と続けた。

伊勢谷は、会見の最後にも、死刑制度について言及。「こびたお芝居をしない中で10回、殺されていくのが怖かった。他人に殺されるという状況が、法的にくだされるのが、この国には残っている。おおむねの日本人は、常態に流されて…殺人者じゃなく法、ルールに殺されていくことは、殺される側としては無力。死刑みたいなことがある、ということが、どれだけ恐怖なのかということを日本に生きながら感じるより、この映画に出たことで、より感じた」と持論を展開。さらに「有史以来、人間は2000年以上、生きていますけど、何か罰を与えて世の中が良くなったことは、まだ1度もないと思う。日本は医療保険も、ちゃんとしていないから(人生の)末期には自分でお金をためこんでおかないと安らかに死ねない。ルールにのみ込まれたまま、生きているということを役の中で体現したのが怖かった。だから余計に、死刑というルールについて、考えるいいきっかけになったらいいなと映画を作り終わってから考えた」と繰り返し、語った。