紅白歌合戦や人気クイズ番組の司会などで活躍した元NHKアナウンサーの鈴木健二さんが、3月29日に老衰のため亡くなっていたことが3日、分かった。同局が明らかにした。95歳。30日に通夜、31日に告別式が近親者のみで営まれた。最近は福岡県内で暮らしており、福岡市内の病院で息を引き取ったという。

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極彩色の映像でカルト的な評価を得た兄の鈴木清順監督(17年93歳没)は松竹入社間もない頃、大先輩の木下恵介監督から「あんな汚らしい男をウチの助監督に付けるな」と言われた。

健二さんもこの兄に負けず劣らず個性とバイタリティーを持ちあわせていた。

3回務めた「紅白歌合戦」初年の司会では、オープニングの「アラレちゃん」の扮装(ふんそう)に始まるお召し替えの連打にやり過ぎ感があった。対抗する紅組司会の黒柳徹子が「大きな『きくばり』がありましたね」と鈴木さんの著作に絡めて真顔で皮肉を漏らしたのが印象的だった。

「紅白」抜てきのきっかけとなった「クイズ面白ゼミナール」の高視聴率は、あふれ返るようなこのバイタリティーがもたらした。

「1テーマのために30冊は読んでます。1回の本代は7万円程度ですかね」

囲み取材で驚かされたことを覚えている。細かい数値データもすべて頭に入っていて、毎回台本を見ずに番組進行した。

「他人が書いた台本は、例え完璧に調査したものでもそれでは50%。自分で調べた事実を加えて100%以上にして初めて自分の言葉でしゃべることができる。そうならなくてはアナウンサーとしてプロとは言えない」とも。

今では当たり前に使われるカメラ「目線」は、「視線」から派生させた鈴木さんの造語とも聞いたことがある。分業が確立した今では想像しにくい「最後の職人アナウンサー」だった。

【相原斎】