俳優でお笑いコンビあさりどの川本成(49)が主宰する劇団「時速246億」の舞台「さよう、ならば、また、」(21日まで同所)が13日、東京・池袋のシアターグリーン BIG TREE THEATERで初日を迎えた。川本に話を聞いた。【小谷野俊哉】

川本の作・演出で、開校から50年で廃校となる高校が舞台。校舎の屋上に住み着く地縛霊たちの出会いと別れを描く。

出演者24人は全員、オーディションで選出。350人の中から選ばれ「チームさよう」と「チームならば」の2チームに分かれ、ダブルキャストで演じる。

川本 350人の応募者の中から200人を1カ月かけて面接して、100人に絞りました。残った100人を1カ月かけて、ワークショップオーディションで選びました。最近のキャスティングはX(旧ツイッター)やインスタグラムのフォロワー数が多くて、お客さんをたくさん持ってるからということもある。しょうがない面もあるけど、正反対のことをやることが必要じゃないかと思いました。

350人の中には、芝居の経験がゼロの応募者もいた。それをオーディションで見極めた上で、キャスティングを進めた。

川本 各チームに1人ずつ、全く芝居の経験がないキャストがいます。今日の「チームさよう」のテンテン役のふたろは、服飾のプロです。

「チームならば」には、お笑いコンビ、にゃんこスターのアンゴラ村長(29)をキャスティングした。

川本 去年の2月に僕が脚本・演出、出演をもした舞台「よんでますよ、アザゼルさん。」を見て「すごい作り方をしている。一緒にやってみたい」と応募してくれました。舞台は2回目ですが、一番の目標がキング・オブ・コントの優勝で「それにはお芝居が必要」ということでした。

12人の地縛霊がそれぞれの思いを繰り広げていく発想。最初はブロードウェーミュージカルのオーディションを描いた「コーラスライン」のように描こうと考えていた。

川本 オーディションでダンサー、アナウンサー…と、いろいろな経験を持った人の話を聞きました。みんなのエピソードがすごすぎて、想像していたものの2段階くらい上。350人を24人に絞ったということは、お別れをした人が多いということ。「ありがとう」と言いながらも「不合格」を告げなくちゃならないから、非常にせつない。つまり“最短の出会いと別れ”がある。それで、設定を地縛霊にしてみようと思った。

その根本には、師匠のコメディアン萩本欽一(82)の教えがある。

川本 台本にボケ、ツッコミを書くなと言われています。普通に生きてりゃ何かある、台本上でふざけるなということです。難しいんですが、人それぞれの正義、人間のおかしみが自然と出てくる。ここ数年、チャレンジし続けいます。地縛霊なりの持論・正義、死を描いて、生きている人に見てもらいます。

今年7月には50歳になる。1991年(平3)に、萩本の主宰する「欽ちゃん劇団」に1期生として入団。94年に入団同期の堀口文宏(49)とお笑いコンビ、あさりどを結成して「笑っていいとも!」の“いいとも青年隊”などで活躍した。

川本 今年は全部やろうと思っています。あさりどのライブも、解散していないんだからドンドンやって行きます。自分の50歳は、相方の50歳でもある。17歳から一緒ですから、この1年間を2人で歩んでいこうと思っています。今年を種まきの期にして、次の段階に行こうと思っています。

“人生100年時代”の半分、50歳。

川本 子供の頃から考えるとじじい。中2の時から考えると、精神的には変わってないのにね。でも、結構なもので“死が見える”年齢になってきた。この作品を作ってみたら、遺言みたいなことを、たくさん書いていた。今現在の人生哲学を詰め込んだ、そんな作品です。

◆川本成(かわもと・なる)1974年(昭49)7月13日、鳥取県生まれ。91年(平3)4月、萩本欽一主宰「欽ちゃん劇団1期生」合格。94年に堀口文宏と「あさりど」結成。94年から3年間、9代目いいとも青年隊としてフジテレビ系「笑っていいとも」出演。07年から劇団「時速246」を主宰、10年に「時速246億」に改名。16年舞台「バック・トゥ・ザ・ホーム」主演。18年舞台「バック・トゥ・ザ・ホーム2018」「バック・トゥ・ザ・ホーム2」。20年配信で舞台「バック・トゥ・ザ・ホーム・ハーフ」。22年舞台「バック・トゥ・ザ・ホーム・ファイナル」。趣味は楽器いじり、古着収集、プロレス。168センチ、血液型O。