“おときさん”こと歌手生活60周年の加藤登紀子(81)が、今年も「加藤登紀子ほろ酔いコンサート」を開催する。
全国6カ所7公演を行う同コンサートを、誕生日の12月27日にどこで開催するかが毎年、ファンの間で話題になるというが、歌手生活60周年となる今年は大阪・新歌舞伎座で行われる。「私のコンサートに来たら、10年は長生きしますよ。元気いっぱい、張りを感じながら、自分がいいなと思う日々を送れるようなコンサートにしたい。夢を描くことを揺らがないで心に持ち続けるのが大事。そのために歌はある」などと来場を呼びかけた。
加藤の取材はコロナ禍以前に記憶があるが、その後はタイミングが合わず、久しぶり。陽気におしゃべりする印象が強く残っていたが、今回も40分以上、にこやかに話し続けた。
コンサートのベースとなるお酒は、今も晩酌を続けており「家で飲むのをしないようにしてたんですけど、1人でご飯食べるのに酒なしはあり得ないでしょ」とニヤリ。「記憶がなくなるほどは飲まないですね。今は」と酒量は落としたそうで、肝臓など体の調子も「大丈夫。本当に良いんですよ。ほどよい量をコンスタントに飲んでるのは本当に良い」と胸を張る。「こんないい気持ちになれるものを我慢することないよ。確実に機嫌良くなるからね。こんなことくらいで気持ちよくなれるなら、世の中変わりますよ?」と飲酒のススメを説いた。
80歳を過ぎても精力的に動き回っている加藤とは対照的に、吉田拓郎や井上陽水ら同時代を生きた後輩ミュージシャンがセミリタイア、音楽活動縮小といった動きを見せている。年を取れば当然、声が出にくくなったり、体力的にもツアーがきついなど、さまざまな弊害が出てくることは容易に想像がつく。
加藤の場合、年齢を重ねても曲作りにはそれほど影響はないという。
「曲作りは必要とあればいつでも。昔に比べたら全然楽ですよ。昔は自分という一升瓶から一滴絞り出したみたいな感じで曲を作ってたんで、曲ができるって奇跡みたいに思ってましたけど、それだけ作ってきてれば、割とはっきりとイメージが持てれば曲ってすぐにできる。作りたいこと、伝えたいことがあれば曲は生まれる」
だが、歌うとなるとまた別の話。「歌い続けてないと大変ですよね。停止しちゃうと再出発は大変。老化の段差に気をつけろって。日々、老いるんじゃなくて、何かがあって段差が急に来る」
それだけに、同時代を生きたミュージシャンのこうした動きには「寂しいです」と率直な思いを口にする。
高田渡さん、遠藤賢司さん、河島英五さんらの名前を挙げ、「みんな亡くなる前まで歌ってた。しぶとく歌うんです。私たちの頃はビジネスじゃないのよ。音楽は。歌える場があったら、道ばたでもいいっていう発想なの」と同時代の“戦友”の生きざまを回顧。
その上で、70年代、“ニューミュージック”としてポップスを商業ビジネスに押し上げた吉田、井上らの功績を「一時代を築いた。日本のポップスの世界に重要な役割を果たした」とたたえた。
リバイバルで昭和音楽の良さは伝えられても、当事者のにおいは確実に遠くなってきている。だからこそ、おときさんにはいつまでも元気で陽気に歌い続けてほしいと願っている。【阪口孝志】



