元TBSアナウンサーで、同局の人気音楽番組「ザ・ベストテン」司会や、テレビ朝日系「ニュースステーション」のキャスターとして知られる、久米宏(くめ・ひろし)さんが1日、肺がんのため亡くなった。81歳だった。所属事務所「株式会社 オフィス・トゥー・ワン」が13日、公式サイトを更新し、発表した。
麗子夫人が発表したコメントによると、大好きなサイダーを一気に飲んだ後、天国へと旅だったという。その光景が想起させるのが、語り草となっているニュースステーション最終回のエンディングで見せた、異例の乾杯だ。
同番組最終回の2004年3月26日、久米さんは約4分半にわたって、MCとしての最後のスピーチを展開した。民間放送の歴史、スポンサー、番組スタッフへの感謝を述べ始めると、口調は次第に熱くなり、話題は自身の半生へ。「僕は小学校1年から6年まで、通信簿の中に通信欄っていうのがあって、先生から母親や父親へのメッセージだったんですが、同じことがいつも書いてありました。『落ち着きがない』『飽きっぽい』『持続性がない』『協調性がない』。ずっと1年から6年まで同じでコンプレックスにさえなっていたんですが、小学校の先生、一人くらい見ていらっしゃいませんかね」と投げかけると、「18年半やりましたよ、あなた。本当に偉いと思うんだ!」と吐き出した。「今日はご褒美を上げようと思って」そう言って、バンッと両手で机をたたくとカメラに背中を向けてスタジオの後方へ。小型の冷蔵庫から冷えたビール瓶とグラスを取り出した。
生放送中の異例の光景に共演者らが目を丸くする中、久米さんは一切のブレーキをかけることなく続けた。番組に対し、時には視聴者から激しい批判や抗議があったことに言及。栓抜きをぎゅっと握り締めたまま「今にして思えばそういう厳しい批判をしてくださる方が大勢いらっしゃったからこそ、こんなに長くできたんだと本当に最近よく分かっています。これは皮肉でも嫌みでも何でもありません。厳しい批判をしてくださった方、本当にありがとうございました」と熱弁をふるった。
そして、視線を手元のビール瓶に移し「これ僕のご褒美です」と開栓。語り口調のような勢いそのまま、瓶の王冠が飛んでいった。横に座っていた女性アナウンサーが「最後まで独り善がりっぽい…」と首をかしげたが、久米さんは気に留めることなく続行。視聴者に向けて「みなさん、近くに飲み物がある方、テレビ観てる方、一緒に乾杯しません?」とカメラ目線で晩酌にお誘い。手酌でグラスにビールを注ぎ「お酒はダメですよ、仕事ある方とか運転する方。お茶とか水にしてくださいね」と続けると、スタジオからもどっと笑い声が漏れた。映像明け、久米さんは「じゃ、乾杯」とグラスを掲げてイッキ飲み。万雷の拍手に包まれながら「本当にお別れです。さようなら」とカメラに手を振り、18年半の放送に自ら幕を引いた。



