上方落語協会の新体制お披露目が行われた。
4月に協会員の互選による会長候補選挙が行われ、18年から4期8年にわたって会長職を務めてきた笑福亭仁智(73)が、前会長の桂文枝(82)を振り切って再任。5期目が始動することになった。
今回の2年の任期中には、文枝が開設に尽力した上方落語の定席、天満天神繁昌亭が9月に開設20年を迎え、27年には上方落語協会が発足から70年と大きな節目となっている。もちろん仁智もそれにふさわしい記念イベントを行うつもりだ。
新体制では、仁智を支えてきた桂米團治が引き続き、副会長としてサポート。文枝が名誉会長として、繁昌亭20年イベントの実行委員長を務める。さらに、若手の育成担当として桂文珍が特別顧問、東西交流担当として笑福亭鶴光が顧問に就任した。
また、桂南光が32年ぶりに協会に復帰。南光は師匠の桂枝雀さん(故人)が94年に協会の運営を巡って一門で協会を脱退して以来、協会を離れていたが、弟子の桂南天、桂天吾の今後の活動を鑑み、復帰を決断した。
18年に文枝の後を受け、会長に就任したが、苦難の連続だった。
1期目では繁昌亭の空調設備入れ替え、天井のちょうちんの新調などを行い、19年7月のリニューアルオープンにこぎつけた。さぁ、これからというところで、20年にコロナ禍に見舞われた。他の演劇同様、観客動員の難しさに直面する中で、オンライン寄席などさまざまな対策を講じた。
コロナを乗り越えたと思ったら、今度は公益社団法人という立場もあって、内閣府から協会規定の改定を指導された。16の規定を順次改定、コンプライアンス順守のため、懲戒規定や外部相談窓口を設置するなど、協会の組織体制の確立に時間を費やすことになった。次から次へと難題が降りかかり、思い通りに“仁智色”というものを打ち出す余裕はなかった。
文枝のように、繁昌亭や神戸新開地喜楽館の開設といった目に見える派手な実績はないかもしれない。だが、関係者はそんな仁智のコツコツとこなす仕事ぶりを高く評価していた。ある関係者は「文枝さんは知名度が高いし、企画やそれを推し進めていく実行力もある。ただ、仁智さんはとにかく人の意見に耳を傾ける。協会のためになることや問題点をとことん話し合って考える。そういうところが再選につながったんとちゃうかな」と話す。
接戦の末に、仁智が会長に選ばれたのも、そうした姿が多くの関係者に支持されたのかもしれない。
仁智は上方落語の未来を見据え、若手が活躍しやすい環境を整えたいと意気込む。
「繁昌亭ができたころと違って、人数が本当に増えたので出る機会も減る。それをなんとかカバーしたい。普通の落語会と違う寄席で学ぶところは多々あるので、寄席は絶対に必要。放っておいても若い子は出てくると思うので、自然の流れで活躍できるような環境をフォローしたい」
24年に亡くなった桂ざこばさんが遺した動楽亭の休演日を活用して、協会主催の寄席公演を開くこともほぼ決まったという。
「これからはさらなる成長を目指した2年間にしたい。9月の繁昌亭20周年、来年4月の協会70周年という大きな記念事業がある。それを協会員一丸となって取り組んで、次の世代につなげていきたい」
5期目にしてやっと、強く打ち出せる環境が整った“仁智色”に期待したい。【阪口孝志】



