二宮和也(43)を取材していると、いつ、どんな時も、映画への愛が本当に深い俳優だと、つくづく感じる。映画担当記者として、出演する映画については舞台あいさつ、イベント等々は近年、大方、現場に足を運び、取材してきたが、6月25日に東京・TOHOシネマズ日比谷で行われたイベント「シークレットシネマ」に初代アンバサダーとして登壇した姿を見て、心から適任だと思えた。
「シークレットシネマ」は、映画を愛するアンバサダーが選んだ「人生で一度は映画館で観てほしい一本」を、当日までタイトルを伏せて上映する特別イベントだ。映画館に年間動員2億人を目指す「映画館に行こう!」実行委員会が、取り組みの一環として、25年に「第一回 映画業界若手戦略会議」を実施。若手の映画業界人が話し合った同会議で選出された企画として開催が決まった。
初代アンバサダー就任はもちろん「二宮が”人生の1本“として何の作品を選んだのか?」が上映で分かる趣旨だったため、二宮が日々、情報を発信するSNSである、X上では考察合戦が繰り広げられ、盛り上がった。「映画館に行こう!」実行委員会が期待する、映画人口の拡大に大きく寄与したことは間違いないだろう。二宮は「正直な話、嫌ですよ。こういうのって、映画偏差値、こいつのセンス、みたいなことが透かされてしまう側と、オファーをいただいた上で想像するわけで…」と口にした。その上で「若手(の映画人)が映画館に足を運んでもらおうとやる。40代に入ったわけだから、嫌とは言っていられない」と一肌脱いだことを明かした。
見に行く映画を選ぶ基準も明かした。「僕は基本的に1人で見て、楽しめるのかが重要。1人で行く派ですね。割と、すごく選ぶ中で多かった」。また「今、やって、今、入れるところ、というのも割と出会うきっかけとしては、すばらしい。偶発的な出会いを求めているかも知れないです」とも語った。自身の作品が公開されれば「もちろん、見に行きますし」と断言し「作っている側の特権と言いますか。お客さんと一緒に作ったものを得て、ダイレクトに評価を受けて1つの作品は完成すると思っているので」と持論を展開した。
上映作品として選んだ、23年の映画「リバー、流れないでよ」(山口淳太監督)も、特異な作りで公開時に話題を呼んだ、通な1本だった。京都・貴船の老舗料理旅館「ふじや」を舞台に、仲居のミコトが貴船川のほとりにたたずんでいたところを女将(おかみ)に呼ばれ、仕事へと戻るが2分後、なぜか再び貴船川を前にしていた。番頭や仲居、料理人、宿泊客も、ずっと熱くならない熱かん、なくならない締めの雑炊、永遠に出られない風呂場など、2分たつと時間が巻き戻り、元にいた場所に戻ってしまいながら、それぞれの“記憶”だけは引き継がれ、連続する「ループ」に陥る“時の牢獄(ろうごく)”を描く、劇団ヨーロッパ企画が作り上げたタイムループコメディーだ。
トークの中で、随所に映画へのこだわり、愛を口にした二宮だが、5月31日に26年半の活動を終えた嵐への思いも漏らした。トークの中で、上映作品「リバー、流れないでよ」のヒントを口にする中で、こう語った。
「非常に演劇的なんですよ。何か、それこそ昔、うちの人もやっていたけど『青木さん家の奥さん』という舞台があるんですけど、頭と休憩前、休憩後とエンディングだけ決まっていて、中身は基本的にアドリブで展開していく演劇。映像としては近しい構造になっていて。物語に入ってからの没入感で言うとつながる。一緒に追体験しているような構成。言ってしまえば、旅館の話なんですよ」
「青木さん家の奥さん」は、2002年(平14)1月にフジテレビ「少年タイヤ」で4話、放送された大野智(45)主演、相葉雅紀(43)櫻井翔(44)が共演のドラマと、同2月に大野主演で舞台として上演された作品の題名だ。ただ、記者は当日、その話は、あえて原稿には書かなかった。あくまで、この日は二宮が「シークレットシネマ」に初代アンバサダーとして、映画について語ったこと、二宮の映画愛が主題だったからだ。
二宮は「シークレットシネマ」2日後の6月27日に、Xで「今日、お世話になっていたロケ地の部分が終了しました 大変お世話になりました 撮影も折り返しに入りますぜ 頑張ります」と、何らかの撮影を行っていると明かしている。また、7日もXで「深みと厚みと枯れ。その現場全員から求められる芝居に呼応する生涯現役俳優。格好良すぎる。その場に一緒に立たせていただき、同じく空間を生きた。台本にはないが泣いてしまった。勿論、カメラ外で。今日の夜それを思い出してまた泣くと思う」とつづっている。
二宮の投稿に日々、目を通すたびに、映画俳優としての二宮の今後に期待したくなる。映画俳優・二宮和也は次に、どんな新しい映画と出会わせてくれるのだろうか? と。いつの日か、映画について深く語り合う日が、再び来ることを心待ちにしている。【村上幸将】



