カラテカ矢部太郎(49)の23年の漫画を実写化する映画「ぼけ日和」(27年公開)に、大竹しのぶ(69)と三浦友和(74)がダブル主演することが26日、分かった。大竹は絵を描くことが趣味で認知症を患いながらも無邪気な笑顔を絶やさない妻、三浦は趣味のカメラを手に、変わらぬ優しさで妻に寄り添い続ける夫を演じる。夫婦を見守る認知症専門医を櫻井翔(44)が演じる。
大竹と三浦は、78年の映画「聖職の碑」(森谷司郎監督)、00年「しあわせ家族計画」(阿部勉監督)、07年「遠くの空に消えた」(行定勲監督)、10年のスタジオジブリのアニメ映画「借りぐらしのアリエッティ」(米林宏昌監督)と過去4作で共演歴があるが、深い演技の掛け合いをするのは今回が初めて。また、3人は内田英治監督(55)の作品に初出演で、櫻井にとって嵐の活動終了後、初の映画となる。
「マンガ ぼけ日和」は、矢部が認知症専門医・長谷川嘉哉氏の、21年のエッセーの挿画を描いた縁から、同作を原案に初めて全編、単行本として描き下ろした。14年の監督作「グレイトフルデッド」で俳優として起用して以降、2人で海外旅行に出かける内田監督に英国旅行中、原作を渡した。読んだ同監督が、自身が20代の頃に認知症だった祖母に十分寄り添えなかった経験を思い出し、23年秋に映画化を企画。老夫婦は漫画を再構成し、実在の患者の要素も加え、原作にはない名前は同監督が考案した。打ち合わせに参加し、脚本作りにも参加した矢部の「重い映画にしないでほしい」との意向を踏まえ、製作側が最適と考えた俳優陣にオファーした。
大竹は「『どこまでも愛』の視点から描いているところを見ていただければうれしいです」と語った。三浦は「父親は95歳で亡くなる前の2年間ほど認知症と診断されました。最近では親しい友人が発症し自分事として捉えるようになっています。認知症の話と聞いた時点では拒否反応があったのですが、夫婦や親子の愛情に重きを置いていることなどで出演させていただくこととなりました」と出演の経緯を明かした。
櫻井は、11年「神様のカルテ」、14年「-2」(深川栄洋監督)以来の、映画での医師役となる。「年齢を重ね、認知症は身近な問題となってきています。向き合っている友人も多くいます。原作に触れ、ぬくもりを感じました」と原作を評した。製作の真っただ中で「大竹さん、三浦さん演じるご夫妻は柔らかく、優しく…でも、徐々に記憶が薄れていく喪失感、別れを感じさせ、胸がキューっと締め付けられます」と大先輩2人の芝居から感じた思いを熱っぽく語った。矢部は「会議に参加して脚本づくりに加わりましたが、一観客として完成を楽しみにしております」と期待した。
俳優陣、内田監督、矢部のコメント全文は、以下の通り。
大竹しのぶ(鳥飼千晴役)初めての内田組でしたが、監督を中心に丁寧に絵作りをする素晴らしいスタッフの皆さんに囲まれて、本当に幸せな時間でした。哀しく、辛い方向からではなく「どこまでも愛」の視点から描いているところを観ていただければうれしいです。
三浦友和(鳥飼道夫役)私の父親は95歳で亡くなる前の2年間ほどですが認知症と診断され、その姿を見てきました。最近では親しい友人が認知症を発症し、身近なものを自分事として捉えるようになっています。この作品への依頼があった際には、認知症の話と聞いた時点では正直拒否反応があったのですが、原作が矢部太郎さんのほのぼのとした「マンガ ぼけ日和」であったこと、そして脚本が辛さだけでなく、夫婦や親子の愛情に重きを置いている内容になっていたことなどで、出演させていただくこととなりました。大竹しのぶさんと、がっぷり四つの共演は初めてです。魅力的な俳優が大勢出演しています。やりがいのある仕事は楽しいです。期待してください。
櫻井翔(阿久津孝介役)まずは、メッセージ性の高い社会派作品から、笑顔あふれるエンターテインメント作品まで作られる内田英治監督作品に参加できること、とてもうれしく思います。自分自身も年齢を重ね、認知症は身近な問題となってきています。いままさに向き合っている友人も多くいます。そのような中に矢部さん、長谷川先生の原作に触れ、この病に触れる中でのぬくもりを感じました。阿久津医師という役柄を通して見る、大竹さん、三浦さん演じるご夫妻は、柔らかく、優しく…でも、徐々に記憶が薄れていく喪失感、いつか来てしまう別れを感じさせ、胸がキューっと締め付けられます。ほほ笑みながら、涙がほおを伝う。そんな温かな"人生"の話です。親御さん、もしくは自分自身と重ね合わせながら、ご覧いただけたらと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
内田英治監督 おばあちゃん、今天国でどうしてるかな……。原作である「ぼけ日和」を読んだときにまず思い浮かんだのは、遠い昔に亡くなった祖母の姿でした。私がまだずいぶん若い頃に認知症となったのです。当時自分は若く仕事一辺倒で、遠い九州ということもあり、数回会っただけでおばあちゃんは旅立ってしまったのです。ああ、生きてるときにもっとたくさん会えばよかった……、なぜあのときたくさん会いに行かなかったのだろう……。同時に、おばあちゃんが生きた時代、おじいちゃんとの結婚生活、その子供であるうちの父との関係、そんなことに思いをはせました。これは、薄れゆく記憶のなかで寄り添う男女。昭和というひとつの時代を生きた夫婦の愛の物語です。役者さんには、国民的俳優のお二人である大竹しのぶさん、三浦友和さんしかいない! と。また、寄り添う医師には、同じく日本で愛されている櫻井翔さんに声をかけさせていただきました。見ると本当に、母や、おじいちゃんおばあちゃんに会いたくなります。ハートフルでユーモアたっぷりの作品です。どうぞお楽しみに。
矢部太郎(原作)認知症について僕はわからないことがたくさんあります。僕の母はずっと介護施設で働いていました。でも仕事のことについてあまり聞くことはありませんでした。どこか知ることをさけていました。もっと知りたくてマンガを描きました。長谷川嘉哉先生は「知識があれば、最期のときに笑顔で見送れる」と書かれていました。このたび、素晴らしいスタッフ、キャストのみなさまにより映画となりました。会議に参加して脚本づくりに加わりましたが、そこから先は一観客として完成を楽しみにしております。大切なだれかのことを思うこの映画『ぼけ日和』が多くの方に届き、知ってもらえることを願っています。
長谷川嘉哉氏(原案)私自身、認知症だった祖父を介護した経験がきっかけで認知症専門医を志しました。「ボケ日和」がマンガとなり、さらに映画として多くの方に届けられることを心からうれしく思います。また、医療監修という立場で、作品づくりに携わる機会をいただけたことは、原案者としても医師としても大変光栄でした。何より、この映画が描くのは認知症という病気だけでなく、困難に向き合いながらも互いを思いやり、支え合い続ける主人公夫婦の深い愛情です。認知症は正しく理解すれば、必要以上に恐れる病気ではありません。そして介護は、一人で抱え込むものでもありません。この映画が、その思いを社会に広げるきっかけになることを願っています。



