13日に心不全で亡くなった漫画家やなせたかしさん(享年94)を日本テレビの藤井恒久アナウンサー(44)がしのんだ。藤井アナは日本テレビ系アニメ「それいけ!

 アンパンマン」の劇場版の声優を15年間務め、舞台あいさつの司会も担当してきた。訃報から一夜明けた16日、やなせさんが「アンパンマン」に込めたプライドやこだわりに触れたエピソードなどを明かした。

 藤井アナは訃報を知った時について「本当にショックで、しばらくぼう然として。まだちょっと信じられない」と沈痛な面持ちで語った。

 99年の劇場版「勇気の花がひらくとき」から15年連続で声優を務めてきた。映画の完成披露試写会と公開初日舞台あいさつでも司会を務め続けた。2年目くらいまで「おい、青木!!」と壇上で名前を間違えられた。「藤井です」と訂正するとユーモアあふれるやなせさんからは「お前の顔は青木っぽいんだよ!!」と返されたという。年に2回の舞台あいさつで会う度に「元気か?」と声を掛けられ、やなせさんの舞台あいさつ恒例「自己紹介の歌」でも

 <歌詞>日本テレビの藤井アナ

 今年も声優やってます~と歌ってくれた。

 忘れられないのは、叱られたことだ。06年「いのちの星のドーリィ」と同時上映の短編「コキンちゃんとあおいなみだ」の中で「フラワーマン」を演じた。制作陣のはからいで、その容姿は藤井アナに似せて作られた。楽しくアフレコしたが、完成披露試写の時にやなせさんは「『アンパンマン』の中に実在の人間が出ることは絶対にダメだ!!」と怒った。「譲れない思いがあるんだなと知りました。浮かれていた自分が情けなく、へこみました」。

 最後の舞台あいさつとなった7月6日の「とばせ!

 希望のハンカチ」の公開初日舞台あいさつの舞台裏で、やなせさんは「目も耳も体の中も全部ダメ」と漏らしていたという。「先生だけ時が止まったように目の焦点も合ってない。春先から、これまでにないくらい取材も受け…自分の体のことを分かっていたのかな」と思いやった。

 来年にはリンゴをテーマにした“遺作”の公開が予定されている。「先生のパワー、思いを違った形でも伝えたい。でも来年の舞台あいさつは先生がいない…」。【村上幸将】