【ロサンゼルス8日(日本時間9日)=千歳香奈子通信員】スタジオジブリの宮崎駿監督(73)が、米アカデミー名誉賞授賞式に参加した。黒沢明監督以来、日本人2人目の同賞受賞でオスカー像を授与されたが、「関係ない」「賞で何も変わらない」などと“俺流”を貫いた。

 オスカー像を前に宮崎監督は、言い放った。

 「本当のことを言ってしまうと、関係ないんです。アカデミー賞に関わることになるなんて思っていなかった。視界に入ってなかった。賞ってもらえないと腹が立つけど、もらっても幸せになれない。それで自分の仕事が突然よくなるとかないし、とっくに終わってしまった仕事だし」

 03年に「千と千尋の神隠し」が長編アニメーション賞を受賞した際、06年に「ハウルの動く城」、今年に「風立ちぬ」がノミネートされた際も、授賞式は欠席した。今回はディズニー・アニメーション・スタジオのチーフ・クリエーティブ・オフィサーで親友のジョン・ラセター氏の熱烈な誘いを受けての渡米。「生涯1回しか着ることはないと思いますが、家内と一緒にデパートに行って蝶(ちょう)ネクタイを買ってきました」と笑った。

 アカデミー名誉賞は卓越した功績を残した映画人に授与する賞で、日本人では黒沢明監督が90年に受賞。しかし、宮崎監督は「黒沢さんももらいたくなかったんじゃないかと思います。今までのことを功労しますなんて。映画を作るってもっと生々しい」などと持論を展開した。

 長編アニメからの引退表明から約1年2カ月。今後は、東京・三鷹の森ジブリ美術館の展示に関わり、同所で流す短編アニメを企画するという。「紙と鉛筆があればできますから、やっていくと思います。そうやって生きようと決めているので。仕事になるのか道楽になるのかは判断がつきません。仕事かと言われたらこんなことできないと思うし、道楽かと言われると仕事だと思うし」。

 鈴木敏夫プロデューサー(66)とともに候補に選ばれた米アカデミー会員候補については「いっぱい映画を見ないといけないじゃないですか。そんなの嫌ですよ」と受けない考えを示した。