2017年、その言動でぐっと存在感を増したのが、自民党の小泉進次郎筆頭副幹事長(36)だ。10月の衆院選をめぐっては「出ても、出なくても無責任」と、小池百合子都知事の国政関与をバッサリ切り捨て、小池氏を「進次郎さんはキャンキャンはやしたてる」と、イラつかせた。選挙が終われば、党内議論なしに官邸主導で政策を進める安倍晋三首相に、正論でかみついた。進次郎氏の言葉は、衆院初当選前の2009年夏から聞いているが、今年は特に、エッジがきいていたように感じた。

 そんな進次郎氏が今年3月、新たに踏み出したチャレンジがあった。地元の横須賀市で開いた「0歳からの政治参加」という政治報告会。文字通り、0歳児から参加が可能。赤ちゃんの泣き声が響き、すやすや眠る子ども、走り回る子もいる中で、進次郎氏が政治の話をした。中心に設けられたステージを囲むように、360度から出席者の視線が向けられる。政治家の会合では、初めて見た光景だった。子どもたちは退屈になると、用意された巨大な「ぬりえ」のボードで遊ぶ。来賓は、ぬりえコーナー前での「立ち見」だった。

 0歳児からの報告会を考えたのは、「日本が、今までと同じことをすることが最大のリスクだと分かってもらうため」という側面も、あったという。「小泉の演説会に行った記憶が、いつか世の中の関心につながってほしい。政治に年齢制限はない」とも訴えた。幼いころから政治の場に参加することが、政治への関心につながるのではないか。30代で次世代を担う政治家の1人として、「現状維持」への危機感なのだろう。

 報告会では質問に、普段語らない素顔も語った。「休みが取れたら」の質問には、ハワイでのサーフィンや、ウイスキーの本場・スコットランドのアイラ島で蒸留所めぐりをしたいと話していた。「最近聴く音楽」を問われると、当時、新アルバムを出していたシンガー・ソングライター、宇多田ヒカルを挙げ、「(アルバム収録曲の)『人生最高の日』。この一節が素晴らしい」と切り出した。

 「『一寸先は闇なら、二寸先は明るい未来』。いい言葉だと思う。よく、政治の世界は一寸先は闇だと、夢も希望もないようなことをいわれるが、宇多田さんにいわせると、二寸先まで行けば明るい未来だそうだ。いい表現だな、いい歌だなと思う」。この歌はもともとラブソングなのだが、毎日が「一寸先は闇」の政治家としては、救われるような気持ちになったのかもしれない。思わぬ形で、「本音」も垣間見えた。

 17年は、酉(とり)年の年男だった。「えさを取るため、最初に氷から海に飛び込むファーストペンギンになりたい」「アシカやシャチが来て食べられちゃうかもしれないが、そのペンギンがいないと、後に続ける人がいない。誰かが動くから動くとか、そういう日本は変わらないといけない」と、ファーストペンギン宣言もしていた。子どもたちの心に、これらの言葉がどう刺さったかは分からないが、終了後、「楽しかった」という感想が多かったと、ホッとした表情で話していたのを思い出す。

 年の終わりに、あらためて取材ノートを眺めていると、あの場で聞いたいくつかの言葉が、その後の行動に実際につながっていることにも、気付いた。18年も、進次郎氏の言葉は聞き逃すことができない。