久しぶりの戦いの場は、因縁の場でもあった。この日の対局は、渡辺明竜王への挑戦権を目指す予選。本来であれば、昨年10月には、タイトルをかけた7番勝負を戦っているはずだった。だが、ソフト不正疑惑により対局は消滅。出場停止処分を受け、棋士として将棋を指すことさえできなくなった。自身だけでなく、家族も悩み続けた約4カ月。勝利こそならなかったが、その戦いぶりはブランクを感じさせなかった。
相手の羽生3冠も、三浦9段の将棋人生に大きな節目をもたらした棋士だ。当時7冠を独占していた羽生から、96年に自身の初タイトルとなる「棋聖」をもぎ取った。苦しんだ日々を振り切り、全力でぶつかれる相手としては、これ以上なかった。
第三者委員会の調査により、疑惑は晴れた。だが、負けが続けば「やっぱりソフトのおかげか」と思われるのは、三浦9段自身が一番強く思っている。今後に向けての手応えを聞かれると「こんなものかもしれない。これだけ長期間、指さなかったことはないので(復調できたかは)分からない」と、口数は少なかった。タイトル以上に大切なプロ棋士の名誉とプライドを取り戻す戦いは、これからも続いていく。【小松正明】
<三浦9段の復帰経過>
▼16年9月8日 三浦弘行9段が竜王戦で渡辺明竜王への挑戦権獲得。
▼10月10日 ソフト不正使用疑惑が指摘され、日本将棋連盟幹部と渡辺竜王らが会合。
▼11日 連盟が事情聴取。
▼12日 連盟が16年末までの公式戦出場停止処分発表。
▼18日 三浦9段が不正使用を否定する声明。
▼27日 連盟が調査委員会設置。
▼12月26日 調査委が「不正を認める証拠はない」と報告。
▼27日 谷川浩司連盟会長が陳謝し幹部の減給処分を発表。三浦9段は「元の状態に戻して」と会見。
▼17年1月17日 渡辺竜王が陳謝。
▼18日 谷川会長が辞任表明。
▼2月6日 連盟新会長に佐藤康光9段を選任。
▼13日 羽生善治3冠を相手に復帰戦。


